第6話 尊いお姿でいっぱいですわ。

 なぜ、わたくしがそんなことまで把握しているのか、ですか?

 それはわたくしが、殿下とカトリーナ嬢をでているからですわ。


 殿下とカトリーナ嬢の衝撃的な出会いの場面だけは記憶しかありませんが、それ以降、重要な場面は記録させていただきましたわ。


 ええ。全てですわ。文字通り全てですわ。


 さきほどわたくし言いましたわよね。あの瞬間、わたくしには判ったと。

 このお二人の尊いお姿こそが正しいと。

 そして決意しましたの。運命のおふたりの恋模様を徹底的に記録してでなければって!


 その日、お屋敷に帰ったわたくしは、頑是無いわらべのように父におねだりをしまして、我が公爵家の影を数人借りてお二人に貼り付けることにしたんですの。


 我が公爵家の影に抜かりはありませんわ。

 あと念には念をいれて仲がよい御令嬢方にも小型の記録装置を渡しておきましたのよ。

 さらに念を入れて、学園に勤めていらっしゃる方々にも協力していただきましたわ。


 おふたりのお姿を撮るという意図を話しましたら、皆様それはそれは熱心に協力してくれましたわ!

 おふたりは人気者ですわね。わたくしだけでなくみなさんにもでられてますのよ!


 はふぅ……素晴らしい日々でしたわ。


 日々蓄積されていく美しい殿下と美しいカトリーナ嬢のキラキラしたお姿! 尊みあふれまくりですわ。


 ほんとうですわよ。おふたりのを記録してありますもの。


 そんなはずはない? ふふ。嘘ではありませんわよ。


 つい先日、3月5日。

 カトリーナ嬢の玄関ホールでの階段落ちは見事でしたわ!

 誰かに突き落とされたフリの小芝居もなかなか堂に入っておりましたし、あんな高いところから落ちて怪我ひとつないなんて! しかも背中から落ちてですもの!

 数十回に渡る訓練と思い切りの良さの成果ですわね。

 それを下でキャッチした殿下もお見事でしたわ! まさに呼吸がぴったりでしたわ!


 ヒロインの危機を救った伝説の英雄もかくやというお姿でしたわね!


 更に半年前の9月2日。

 カトリーナ嬢が大噴水に落ちた時もうつくしかったですわ。


 誰かに突き落とされたかのように悲痛な悲鳴をおあげになって落ちていく様は、まさに悲劇のヒロイン。


 その直後、全身から水滴をしたたらせてあがってくるお姿のうつくしさ!


 濡れて乱れた髪に乱れた制服、濡れて透けた御装束の妖しさ!

 乙女なら決して人目には触れさせたくない所まで透けたお姿!

 スカートが乱れに乱れて、付け根まで剥き出しになったおみ脚の生々しい白さ!

 それら全てが真昼の陽光に照らされて……たまりませんでしたわ!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る