紺碧の戴冠
@parli
第1話
8月某日
もうどれくらい歩いたのかわからない。あまりの暑さに体が溶け出してしまいそうだ。
(スマホのマップによればもうすぐ着くはずなんだが、、、。)
(、、、あれか。)
歩道の右側に面した薄汚れた雑居ビル。正面に立つと地下へと続く階段の横に小さな看板があった。
「バー 鵜原」
真昼間だというのに、ここだけ夜のまま時間が止まっているような雰囲気がある。
(入るしかないか、、、。)
意を決して階段を降り、扉に手をかけた。
中は意外にも綺麗で、普通のバーだった。カウンターがあり、数席のテーブル席があり、あまり広いとは言えなかったが落ち着きのある雰囲気だった。
カウンター席の奥に黒いポロシャツを着た男が一人座っている。
(あの男か、、、。)
男に向かって歩いていき、あと数歩のところで前に何かが割り込んできた。黒いスーツを着た男がこちらを向いて立っている。サングラスをかけているためどこを見ているかはわからないが恐らく自分の方を見ている。
(こんな時期にスーツ?というか何だこの男?変な男だ、、、。)
男のわきをよけてカウンターの方へ向かっていく。真横に並んだ時、スーツの男が俺の肩をつかんで無理やり男の方へ振り向かせた。あまりの力によろめき転びそうになる。
「ちょっ! 何です、」
声を出したとき、腹に強烈な痛みと熱さを感じた。驚いて腹を見ると、ナイフが腹に突き立てられていた。ナイフが抜かれ、血があふれ出す。
「っ、、、、、!」
声にならない苦しみが脳に響く。身体に力が入らず、横たわる。スーツの男は恐らく俺の方を見ている。意識が遠のき、目も開けていられなくなった。
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