とある作者の独り言 9) ハイコンテクストな言語で物語を書くということ

 作者です。


 さて、先週は、一冊の本を紹介させていただきました。


題名:異文化理解力 相手と自分の真意がわかるビジネスパーソンン必須の教養

エリン・メイヤー(著)、田岡 恵(監修)、樋口武志(翻訳) (敬称略)

 「日本語はハイコンテクスト(high-context)な言語である」とこの本では紹介されております。作者は、ハイコンテクストな言語である日本語を母語としており、物語も日本語で書いております。


 物語も、全てのことを書いているわけではありません。つまりはハイコンテクストなものです。


 一人の人の一日を全て書いたらどうなるでしょうか。朝、目を開けるとこから始まり、寝具から出て、右足または左足から寝台から降りて、着替えたり食事をしてから家から出るまでを描写するだけで、どれほどの文字数が必要になるか。全てを文字にすることはありません。


 無論、必要なことは語ります。天蓋付きの寝台で絹のシーツに包まれていたのか、パイプベッドで綿毛布に覆われていたのか、硬い床に寝袋で転がっていたのか。それだけでも、主人公の境遇や、物語の背景が伝わるのではないでしょうか。


 特に映像作品(映画、漫画など)では、その場面を映像として見せることで、登場人物の紹介、時代背景などを伝えて面白いですね。


 さて。質問です。

Q1. 主人公が、天蓋付きの寝台で絹のシーツに包まれていたという描写で、あなたは何を連想しますか。その根拠は何ですか? なぜ、あなたはその根拠を持つに至ったのですか?


Q2.あなたは、その根拠をいつ、何で、どのようにして知りましたか?


 質問ばかりで申し訳ありませんので、作者の場合を記載させていただきます。

「いつの間にか知っていた」

なにそれと思われる方もおられるかもしれません。ただ、本当にこれ以外の答えがないので、正直に答えさせていただいております。


 物語で描写される何かが、登場人物たちの背景を語っているならば。その描写が何を意味するのか、読者が知っているという前提で、紡がれる物語はすなわちハイコンテクストなものでしょう


 一時期、小説を書くには○冊以上の本を読むべきだと、Twitterで流れていたことがあります。○冊以上の本を読んだ人物が、日本語というハイコンテクストな言語で書く物語は、相当ハイコンテクストなのでははないかと思います。


 ローコンテクストな言語で書かれた物語が、ローコンテクストだという意味ではありません。具体例を上げるのであれば、かの有名な「To be or not to be that is the question.」に様々な日本語の翻訳があることが一つとなるでしょう。


 かといって、全部書くには問題がある表現もあるのですね。作者、架空の世界の架空の場所の架空の時代の物語を書いております。ある程度、現実を参考としますので、身分制度があったりします。基本的人権などという概念は欠片もなく、人種差別や職業差別が当然だったりする時代は、なかなかに壮絶です。


 キング牧師が I have a dream から始まる有名な演説をしたのは1963年米国でのことです。

 

 現代と価値観が異なる時代は、現実の世界に確かに存在したのです。


 物語を目にするのは、現実の世界に生きる現代の人々です。現代の価値観にあまりにもそぐわないことは、できるだけ書かずに伝えたいと思っております。物語がハイコンテクストであるという特徴を利用し、直接的な表現を使わずに、表現できたらと思っています。


「朕は国家なり」

「平家にあらずんば人にあらず」

歴史上の人物の言葉として、どこかで耳に挟んだことがある方も相当おられるはずです。どちらも、当時相当に権力を持っていた方、あるいは権力を持っていた集団の一員であった方の言葉ですね。


 当然、権力などとは無縁の支配され抑圧される立場の方々もおられます。賤民や奴隷や奴婢といった立場の方々ですね。当時、そのような立場であった方が口にした言葉や、かけられた言葉、あるいはどのように扱われていたかも残っています。


 参考までに読んだ本です。(敬称略)

 中世を旅する人々 著者 阿部 謹也  ちくま学芸文庫

 中世ヨーロッパの都市の生活 著者 ジョセフ・ギース/フラシス・ギース 訳者 青島 淑子


 あくまで架空の世界の物語ですが、身分制度や差別が当然のようにある場合、どう書くかが課題だと作者個人は感じております。一つ一つの物語を作者は大切に思いながら紡いでいます。一方で、全ては夢物語です。空想です。あまり好ましい表現とは思いませんが、虚構であり、嘘なのです。


 何をどこまで書くか、書かないか、いろいろと難しいなと思いながら、次回作を用意しております。


 完結あるいは完結の目処がたちましたら、投稿したいと考えておりますので、是非よろしくお願いいたします。

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