川辺

!一話完結!

!これは失敗作!

名前はコピペ時に変更OK

コピペOK

少し(ほんの数文字)変えて一次創作OK

もちろん大改造もOK



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もうどれぐらい歩いただろう...

新年の花火を見ようと来た河川敷で私は親とはぐれてしまった。

あいにく携帯を持っていないので、親と情報を共有する手段は何もない。

隅から隅まで歩いて親を探した。

明るい屋台のそばから暗く人の気がしない仮設トイレの場所まで、ずっと歩いた。

だが、見知らぬ人ばかりだった。


「おーい落としたよー」

不意に呼び止められた。

見ると、小学三年生ぐらいだろうか。

背の小さな少年が手を振っていた。

「お姉ちゃん、はいこれ。手を出して。」

手を差し出すと、少年は小さな包みを乗せた。

「もらっていって。」

そういうと少年は駆け出して行った。

すぐに人ごみに紛れ、姿が見当たらない。

包みを開けてみると、そこには小さな豆と紙切れが入っていた。

「...こんなもの落としたっけ?」

自分の身に着けているものは財布のみ。

こんなものを家から持ってきた?

いや、そんなわけはない。


そっと紙切れを開いてみる。

おかあさん、おとうさんはこっち↑

この暗い道をずっと行ったところにいるよ

だれもいないみたいだけど、いるよ

豆はおまもり

なくさないでもっててね

そう書いてあった。

私は半信半疑でその道を進んだ。

さっき通ったばかりの仮設トイレを過ぎ、駐車場を過ぎ、ずっと歩いて行った。

しばらく暗い中を歩くと、そこには小さな鳥居があった。

「こんなところに鳥居?なんでだろう...」

それの前に立つと、不思議な感覚になった。

まるでおいでおいでと言っているみたいだ。

これをくぐらなければならない、そんな気持ちになった。

そして...

...くぐった。

その瞬間、体が宙に浮いたような感覚がした。

そして視点が空から会場を見ているように変わった。

どんどん高度を増していく。

...そして会場は見えなくなった。


ふと気が付くと、原っぱに横たわっていた。

360度どこを見ても、何もない。

そこは本当に「草原」という言葉が正しいような場所だ。

時折、暖かい風が吹く。

それは春の暖かい陽の光を思い起こさせる風だ。


ずっと前のほうから声が聞こえた。

「おーい、さとちゃんこっち!」

「早くおいで」

それは親の声だった。

「お父さん、お母さん!」

夢中で駆け出した。

随分と走ると、そこは砂利道になっていた。

そう、あの駐車場だ。

そう気づいたと同時に、あたりはまた闇に包まれた。

そして目の前にはお父さん、お母さんの姿があった。


「随分と探したぞ」

「よかった...いてくれて...」

「ごめん...もう離れないから...」

私はお母さんに抱き着いた。

そして、新年の花火が上がった。


帰り道、車の中で私は何度も言った。

「背の小さい男の子が助けてくれたんだよ!」

そういっても何も信じてもらえない。

証拠の豆はあるのに...

それを見せても「どうせまたどっかで拾ったんでしょ」と言われてしまう。


その後、私はあの時見た鳥居が昔に水難事故で子供を亡くした親が作ったことが分かった。

さらに、その子供は新年の花火会場で親とはぐれてしまい、途中でおやつ代わりに買ったバターピーナッツの袋と一緒に水中で見つかったということも分かった。

「...助けてくれてありがとう。」

今日もそう鳥居に伝えに行く。

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