お隣さんにドキドキ
aqri
第1話
がちゃ、と扉を開けて外に出た時お隣さんと遭遇した。向こうも扉を開けて出て、私を見てニコリと笑うと声をかけてきた。
「どうも」
「あ、おはようございます……」
私が少し緊張した様子なのがわかったのだろう。彼は困った顔をした。
「えっと、ここに住んでる子と付き合ってて」
「ああ、そうなんですね」
お隣さんは女子大生。知らない男が出てきて不審に思った、と考えたらしい。まあ確かに顔を合わせるのは初めてだ。
「すみません、夕べうるさくなかったですか? ちょっと彼女と盛り上がっちゃって」
「夕べですか? 気が付かなかったなあ。私お酒飲んで寝ちゃうと起きないから。夕べもブラック課長に嫌味言われて、やけ酒飲んで寝ちゃったし」
「そうですか、大変なんですね」
当たり障りない会話をしてじゃあ、と男はアパートを出る。
私は今とてもドキドキしてる。心臓がバクバク。
初めて見る彼氏さん、超イケメンだ。芸能人? って思うくらいに。緊張した。ドキドキが止まらない。
どうしよう、私。
五時間前 深夜十二時。
寝れん。明日も早いから寝たいのに。何故寝れないか? 原因はお隣さんだ。女子大生が住んでるんだけど、まあ若いからなのか夜のハッスルが激しいのなんの。いやプレイが激しいんじゃなく、頻度がえげつないわ。毎日だよ、どうなってんだ彼女の性欲。
どうやら彼氏は忙しいらしく、男をとっかえひっかえ。見かける男は毎回違う。美人さんだから簡単にひっかかるんだろうなあ。それにしたって自分の部屋に連れ込むとか防犯意識なさすぎるでしょ。今も喘ぎ声が凄いんだけど今日はちゃんと彼氏さんらしい。
いや、丸聞こえなのよ声。壁はそこまで薄くないんだけど、換気扇から聞こえてくんのよね。大家さんに相談したら設計ミスがわかって、音がダイレクトアタックなんだとか。ごめんね、工事するお金ないや、と言われ今に至る。私は一人暮らしだからこっちの音があっちに行く心配はない、会話しないもんね。
でもコレが聞こえてくるのはマジ勘弁してほしいんだわ。他人の情事ほどイラっとくるものはない。
ぜえええったい、そんなアンアン言わないだろ。AVの見過ぎだ。実際は動物園みたいな感じなんだよ、猿がキイキイ言ってるのと豚がピギー言ってるの足して割ったくらいだ。男を喜ばせる喘ぎ方、心得てるんだなあなんてしんみりしちゃう。
壁、蹴ったろか。はあ、とため息をついたが。
「おい、これ何だよ」
突然殺気立った声が聞こえた。
「どう見てもキスマークだろ!」
「ち、違うよ! えっと、ぶつけたの!」
キスマークじゃねえの? どう考えても。あーあー。バレちゃったね浮気、ざまあ。天罰じゃ。
「
あ、うん。確かにね。そんなところぶつけらんないよね。プロレスでもしない限り。プロレスしてたようなもんだけど。
「俺が知らないとでも思ってんのか。男何人も連れ込んでんの知ってんだよ。今日はそれ確かめに来たんだよ!」
「違うってば!」
上手いねえ。これに懲りてちょっとは男遊び控えてもらえると静かになるなあ。
「相手の男がわざわざ自慢しにきてくれたからな、お前の彼女の股の具合ゆるくてつまんねえってな!」
「はあ!?最悪! っていうか私が悪いんじゃないし、相手してくれないアンタが悪いんでしょ!? 顔しか取り柄ないくせに偉そうに言わないでよ!バーカ!」
「……言いたいことはそれだけだな、ゴミ女」
「え? あ、何……ひい!? い、やめ……ぎゃっ ああぁぁぁ!?」
……。
し、静かになっちゃった……。
「あーあ、やっちゃった」
待てやああああああ! まあいっか感すっごいけどとんでもない事してるだろ! 生卵床におとしたのとはわけが違うぞ! やっちゃったって、やっちゃったってことでしょ!?
落ち着け私。すべては私の妄想だ、まるで喧嘩からの殺人事件が起きているかのような声だったけど違う可能性あるぞ。
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