2022/12/12 第12話
ファルコンこと
「助手さんもいるじゃ〜ん! おつ〜」
春子さんはおれにも手を振ってくれる。名前は覚えていないようだが、認識されているだけでもありがたい。
「あ、ど、どうも……」
「ファルコン、ここの学生なんだよ」
「二十歳すぎて入ったからちょっと老けてるけど〜正真正銘JDなり〜! うぇ〜い」
こんな高偏差値大学の学生だったのか。好き勝手に生きてるお金持ちのお嬢様だと思ってたけど、実は受験勉強がんばったりしてたんだな……失礼だとは思いつつ、ちょっと見る目が変わってくる。
「へぇ、何かなりたい職業とか……」
「そゆのじゃなくてぇ、急にキャンパスライフやりたくなって〜、キャンパスお洒落なとこ受けたら受かった〜」
「へ、へぇ……」
相当金持ちじゃないとできないやつだった。しかし、それで受かってしまうのは凄いな……やっぱり見る目は変わった。
「で先生、来美ちゃんのこと知りたいんだよね〜?」
「そ〜なんだよね〜。ちょっと人に頼まれてさ〜。ファルコン顔が広そうだからどうかな〜って。あっ、柳コーヒーかなんか買ってきて。人数分。ファルコンは何飲む〜?」
普通にパシられた。まぁ助手なので通常業務である。ああ見えて先生、後でちゃんと精算するタイプだし。
で、おれたちはカフェテリアのテーブルを囲んで座った。春子さんと話していると、先生も相手に合わせて喋り方がゆるふわになる。大きな窓からは明るい日差しが注いでいるし、なんというか心霊動画について話し合う雰囲気ではまるでない。
「へへへ、あたし学祭実行委員やってるからさ〜、色んな部活とか同好会とかの人と知り合いなわけ〜。てか来美っち有名人だったしね〜」
「あ〜、なんか賞とかとったんだっけ?」
「それそれ〜! そんなんでアゲアゲだったからさ〜、自殺とかする感じじゃ全然なくって〜。まぁだから今瑠香奈ちゃんの呪いじゃねみたいな噂にかなりなってて? それはさすがにちょい不謹慎じゃね? とか思うんだけどさ〜」
意外に――と言ったら何だが常識のあるところを見せられてしまった。何にせよ、同じ場所で自殺が続けばそりゃ話題になるよなぁ……。
チラッと先生を見たが、涼しい顔でコーヒーを飲んでいるだけだ。ほんとに大丈夫かなこの人? 何か思いついてるといいけど……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます