第9話

「リコ!」

 ポポの呼び声とともにジャキッと小銃のリロード音が聴こえた。いつの間にか、二人の周りをメンバー達が取り囲んでいた。

「ポポ、無事だったのね」

「あいつ頑丈なのは外側だけで、中身はボロボロだったわ」


 メンバー達がじりじりと二人に詰め寄る。

「残念だな、お前とはわかりあえると思っていたが……」

 ネオがドンッと銃弾を放つとリコは瞬間的に上体を反らした。上体を戻すとそこにネオの姿はもうなかった。


「どこに消えたの?」

 ユヅはレーダー探知機で辺りを観測しながら慌てた。

「気を付けて! ネオの特殊能力電磁光学迷彩は、姿を視認できなくすることができるの」


 リコが叫んだ直後に大きな衝撃音が響き渡った。倉庫の煉瓦を突き破り、鋼鉄の装甲車両が飛び込んできた。車両から銃撃が開始されると、メンバー達はすぐにその場から離脱しラックの影に身を潜めた。

 車両はキュルキュルとタイヤ摩擦の煙を吐くと、急発進して辺りの瓦礫を蹴散らしながら倉庫の外へと向かった。

 

「まずい、逃げられる!」

 ハナビがランチャーを構えるが照準がうまく合わない。

「私にまかせて」

 通信機からトコの声が聞こえた。


 トコは倉庫から出てきた装甲車両をスコープで覗きながら目で追った。照準をタイヤに合わせると引き金を二回引いた。

 弾が命中するとバンという破裂音とともにタイヤが空転し、車体は火花を散らしながら横倒しになるとそのまま数回転して倉庫の壁に激突した。

 爆発音が響くと車両は激しい炎に包まれた。

 トコはふうと息をつくと、通信機に呼びかけた。「任務完了」


「これで掃討作戦完了ですね。モカ大尉に連絡しますか、リコさん。あれ、リコさんは?」

 ユズが声をかけたが、そこにリコの姿はなかった。

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