第25話「ブラック企業の光」
……イイヒリョウニナレヨー
ごりゅごりゅごりゅ……!
顔をマスクで覆いながら、肉と内臓はコンポスターにぶち込んでいく……。
「ふー……しんど」
あー、くっせー
「ったく、やってらんねーなー」
大量のドラゴン肉と内臓をプレスしてコンポスターに無事、投入完了ー。
ドラゴン(?)さんは、これにて肥料に転生。
ま、一週間ほど待ちたまいよ!!
「……よっし! キツイ作業のあとは、お楽しみ!! 残った肉は──────ステーキだぁぁあ!!」
コンポスターをあっという間に埋め尽くしたドラゴン肉と内臓。
その間、残った分は、食ってみることにした。
幸いにも、恵美にオーク肉を強奪されたせいで、冷蔵庫に空きはあるのだ。
全部は無理にしても、いくらかは入れておけるだろう。
それにドラゴンの肉だ。
ファンタジーでは御馳走と相場が決まっている! ちょっと楽しみといえば楽しみ。
と、いうわけで─────。
いざ、実食!
ジュワーーーーーーーー……!
油をひいて、分厚いままのドラゴン肉をゴロンっ!
「……うわ! でっかぁっぁああ! 全然火が通らねぇ!」
しかも、物凄い匂いだ。
明らかに牛や豚のそれとは違う───。
な、なんかドブっぽい??
ためしに、一切れ齧ってみると、
「んぎぎぎぎ…………。ぎ───。か、
大量のドラゴン(?)肉を、分厚く切ってフライパンでソテーにしてみたのだが……。
案の定、すっさまじい硬さだ。
味もイマイチ……。なんか、臭いし、筋っぽいし、血なまぐさい────総じて不味い!!
「んだよ、ドラゴン(?)が旨いとか、どこのファンタジーだよ!!」
爬虫類系の肉とはこんな感じなのだろうか。
まぁ、旨ければスーパーに鰐とかトカゲの肉が並んでるわな。
「あーダメだ。ギブアップ……ポンタ食う?」
『わふわふっ!!』
行儀が悪いが、肉の焼ける匂いに鼻をフンフンと鳴らしていたポンタに丸ごとあげることに。
すると、尻尾フリフリ、ポンタはドラゴン(?)肉のソテーにかじりつくと、思ったよりも強靭な歯でアグアグと齧り始めた。
「はは! ゆっくり食えよ、いっぱいあるから……」
うん、ほんといっぱい……。
チラ見すると、冷蔵庫一体のドラゴン肉。
オーク肉も残っているのに、これどーしよ。
「あとで、固い肉の食べ方検索しよかね」
スマホはどんな時でも味方だ。
探せばきっとドラゴン(?)肉の食べ方もあるはず…………はず。
大量の肉の処分に頭を悩ませながら、今日のところは作業終了ー。
「はぁ……な~んで、昔と同じように家で仕事してるんだろ」
※ その頃、ニューヨーク、国連のダンジョン研究所にて ※
「おはよ、キャロル」
「おはよー……」
いつも以上に目に隈を湛えたキャロルに苦笑しながら、朝食を差し入れるジェシー。
「もー……。アナタ、徹夜したの?」
「うん……? ありゃ、もうこんな時間。てっきり夜の8時かと思ってたわ」
机にかじりついたまま、大量の資料と比較分析をしていたらしい。
「ばっかねー。夜の8時でも十分残業よ。だいいち、残業してもだ~れも褒めてくれないわよ」
「そーゆ~んじゃないの」
にひっ。
色気のない恰好で病的な笑いを浮かべるキャロルをみて呆れた顔のジェシー。
しかし、キャロルは一向に構わず、
「これはね。趣味よ、趣味。ダンジョンって好きなの、アタシー」
「知ってるわよ。ほら、それより朝ごはん」
「わ! ありがとー!」
売店で買い求めたドーナツと濃い目のコーヒーを差し出すと、顔をほころばせるキャロルをまじまじとみる。
(この子、もったいないわねー)
化粧すればきっと美人なのだろうなー……と、残念に思うジェシー。巨乳だし……。
そうねー。
ソバカスをファンデーションで隠して、
綺麗な金髪にクシを入れるだけでも相当化けそうだ。
だけど、本人はその気は全くないのだろう。
化粧すら人生の中でやったことがあるかどうか……。
研究とダンジョンに人生の全てをかけていると言わんばかりのキャロルはここ数日の大変化に喜々として仕事に取り組んでいた。
もともと、ダンジョン研究に没頭したいから、国連に入ったような子だ。
しかし、実態をみれば、窓際部署に追いやられて腐っているだけ。
一時は本当に絶望していたようなのだが…………。
「寝るのも待ったいないって感じね?」
「
「食べながらしゃべらない」
「ふぁ~い」
そんなことないよ、といいつつも資料から目を離さない。
そこには巨大なマンドラゴラの分析結果が幾重ものデータと共に記載されている。
傍らにはファイリングされたクリムゾンゴブリンやら、新種のオーク。
そしてユニークモンスターの、大型オーガだ。
「なーにがそんなに面白んだか──────あ、メールだ」
ジェシー自身はダンジョンにさほど興味はない。
ただ経歴と学歴がぴったりマッチングしたのが国連だったというだけ───。
そんなやる気のなさを看破されていたのか、気づけば
「あらま?? これって───ねぇ、キャロル。また、あの日本の
「え? オオゾラから? 嘘……? またぁ?」
そんな馬鹿なと首を振りつつ、
コーヒー片手にフラフラと旧式のPCにとりつくジェシーの肩越しに除きこむキャロルであったが……。
「え~っと……いつもの新種鑑定依頼ね。へー、こりゃすごい、どうもまた新種みたいね……」
──────……って、これ?!
メールに添付されていた画像を見た途端声を詰まらせるジェシーを訝しがるキャロルは、その背後から画面をのぞき込む。
旧式ゆえのちらつく画面をまじまじと──。
「は、はやくはやく! キャロルこれみないさいよ!!」
「ん~……どれどれ?」
ズズズとコーヒーを啜りながら画面をのぞき込み───。
いつものメール。
見慣れた定型文。
そして、差出人はOHZORAカンパニー。
………添付されている新種の写真は────。
ド──……。
「───ぶほぉわぁぁああ?!」
「ぎゃぁぁぁぁあああああ!!」
そこに映し出されていた巨大なモンスターの残骸を見て、熱々のコーヒーをキャロルの背中にこれでもかと叩きつけたのだった。
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