第15話「そろそろやべぇ……」
「ふぁぁぁ……よく寝た───」
べちゃ。
…………あ、
「──やッべぇ! 窓際で寝ちまったよ」
顔にくっきりと付いた畳の後。
涎がしみ込み、畳にもシミが残りそうだ。
ぐぁぁ……やっちまった。
しかも、畳で寝たせいで身体中がバッキボキだ。
ちゃんと布団で寝なかったため、疲れも抜けた気がしない。
くっそー
中年になると、体力の回復も実に遅くなるのよ……。
「あーぁ」
金も仕事もないのに、酒なんて飲むもんじゃないね……。
仕事がないのは俺のせいじゃないけどなッ!
あ……そういや、
金といえば、新種鑑定の方はどうなってんだっけ?
多分、新種じゃないんだろうけど、万が一。
そう、万が一にも、新種だったら結構な額が振り込まれると聞く。
「まぁ、期待したら、期待するだけ損するからね─────────って…………あれ??」
チカッ、チカッ!
メールに新着有。
しかも、前の会社の口座に入金ありとのこと───。
「…………ありゃ? これって──やっぱ新種だったのか??」
さっそくスマホで暗証番号を打ち込み、前の会社に支給されている銀行口座をチェック。
会社がなくなってからは当然給料の振り込みなんてないんだけど─────…………「な、なにこれ?」
ひーふーみー……ゼロがいっぱい。
「え? ちょ……」
え? うそ??
ぎゅ~っと、頬をつねる。…………痛い。
「り、リアル?」
新しい入金が、カラっけつはずの口座に踊っているんだけど……。
え、えええ……。
えええぇぇぇぇぇぇえ?!
マ、マジぇ…………?
高橋は、一度瞑目してから、
そのまま、ズボンを下ろして朝いちばんを絞り出し、ウォシュレットを丹念に使ってスッキリする。
「ふー」
そして、スッキリした目と頭で、もう一度瞑目し──────……確認。
ひーふーみー………………。
「ぶほっ!!」
よ、
よ、
よ、
「四十万円んんんんんんんんんんんん?!」
前の会社で使っていた口座に振り込まれていたことにびっくり。
さらに、その額を見て二度ビックリ!!
どうやら、昨日中に振り込まれたらしい。
アメリカの国際銀行から、日本の提携銀行を経由して振り込まれたために若干のタイムラグがあったようだが……。
約40万。
約40万である!!
多少の手数料を差し引いても───す、凄い額だ!
「う、う、う、うそぉぉぉお!!」
ま、まじかー!?
まじなのかー!?
「い、今のレートが1ドルだいたい135円として───……」
げーーーーー!!
おおよそ3〜4000ドルの振り込み?!
マジぇえ?!
「とうことは、もしかして、一体あたり1000ドル?! たっか!!」
これ、ポンタが捕ってきただけのモンスターですよ?!
あれ、ほとんど生ゴミと一緒にコンポスターにいれた奴ですよ?!
そ、それが、1000ドル……????
たしかに、色が変だったり、刺青がついてたりするけど──────。
……い、犬小屋の中から引っ張り出されて来たモンスターですよぉぉぉおおお?!
「……い、いや、ひょっとして───あれだけ小さいダンジョンだ。もしかしてスゲー特殊な環境なのか?」
………………きっとそうだ。
あの目力とかいう、ダンジョン管理局の人も、
「こ、こりゃぁひょっとして───……」
ゴクリ。
あれほど散々ポンタにはダンジョン禁止といっていたが、それがお金になると分かれば別だ。
ただの一般人でしかない高橋に、ドロップ品を売るのは無理にしても、新種登録料だけでも結構な稼ぎになりそうな気がする。
だって実質、数日で40万の稼ぎですよ?!
いや、でも……。
「生きた魔物を外に持ち出したら、
大惨事ですよ?!
つまり違法です、いほー!」
という目力の言葉が思い起こされる。
「ぐぬぬぬぬ……。そ、そうだった、違法はまずい……」
ま、まずいんだけど───。
……べ、別に高橋がダンジョンに入っているわけじゃないし、いいよね?!
うん、そうだよ?! 俺は何もしてないよ??
そう。ポンタだよポンタ!!
ポンタ君が勝手にとってきたの───……OK?
「って、いいわけないよなー」
……だけど、
実際のところ、この辺り法律的にはどうなん?!
「む、むむー……やっぱり一度ダンジョン管理局に相談してみるか。ダメならダメで、封鎖するなり、何とかしてもらわないと困る……」
だって、ここ俺んちの庭だもん!!
……………………よし、決めた。
「目力さんにちゃんと相談しよう」
もちろん、コンポスターの中で絶賛肥料に転生中のオーガたちのことは内緒で。
肥料はあとで庭に撒いてしまえば証拠はない!
───と決まれば、
「おーい、ポンタ。今日は目力さん呼ぼうと思うから、おとなしくしてろよー」
庭に顔を出しつつ、電話。
あれ?
……そういや、今日のポンタは大人しいな?
まぁ、それが普段のポンタなんだけど───……お、履歴あったあった。
スマホの履歴はほとんどないし……っていうか、あ、はい。目力さんだけですね。くすん
ぷっぷっぷ、プルルルル───
電話をかけつつ、ポンタを呼ぼうと骨々ガムを片手に庭にでる。
「お~い、ポンタぁ?」
プルルルルルル
「……ったく、目力さん、いっつも電話出るの遅いんだよなー」
プルルルルルル
「とりあえず、この隙にポンタは玄関に移動させよ───」
ガチャ。
『はい、ダンジョン管理局、目力です』
「───あ、目力さん? 先日電話した高は……ぁぁぁあああああああああああああああああああああああ?!」
『ぅわっ?!』
な、ななななななななななな!!
『へっへっへっへ♪』
『ッ……びっくりしたー。ちょ、な、何なんですかいきなり?!』
…………。
……。
あー……。
ポンタ君や?
『もしもーし? 高橋さんですよね? もしもーし』
『もしもーし! ちょっと聞いてます、たかは』ぷつ
ツーツーツー
『わんわんおッ♪』
「わんわんお♪ と、ちゃうわぁぁぁああああああ!!」
な、な、な、
「なんじゃそりゃぁぁぁああああ!!」
──なんじゃそりゃぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああ!!
東京郊外に響き渡る高橋の絶叫。
なぜなら、ポンタ君。本日の獲物をちゃっかり確保してました────。
※ ポンタの戦果:????? ※
《収入:『学術協力金』430,875円
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