ブラック企業に勤めてたら、社長に夜逃げされました。仕方ないので、庭に出来た超小型ダンジョンで生計をたてます
LA軍@多数書籍化(呪具師200万部!)
プロローグ「全部、社会が悪い」
おう、
ジーザス…………。
平屋の小さな会社の前で立ち尽くしているのは数名のサラリーマンたち。
その中の一人、
…………いや、
──と、いうのも、高橋を含め、彼等はいつのもように朝イチで出勤し、
いつものように、スーツから作業服に着替えて勤務に就こうとしたのだが、
「あ、あれ? 入口が開かねーぞ?」
「なにやってんだよ? もっと回せって!」
ガチャガチャ! ガチャガチャ! とノブを回す高橋を同僚が背後からせっつく。
「やってるよ!!」
しかし、開かないのだ……。
「……ッかしいな~、そも、なんか建物に電気きてなくね?」
「つーか……なんだこの張り紙───」
ざわざわ
ざわざわ
閉ざされた入口の前で立ち尽くす(元)会社員たち。
彼らの注目する先には、適当に蛍光ペンで雑に書きなぐった紙が一枚あった……。
『【業務連絡】大空カンパニー
……社員の皆さん。
長らく当社に貢献していただきありがとうございました。
当社はこれにて無期限に営業を終了します。
社員皆さまの今後の益々のご発展とご多幸を祈念し、
第二の人生を歩まれることを期待します───(ww)』
(元)代表取締役:
しーーーーーーーーーーーん。
「「「……………………は??」」」
な、なにこれ?
「ww」って、おま……───。
これ、おま……!
お前、
「よ、夜逃げしやがった……あの社長ッ」
ようやく察した高橋であったが、その瞬間空気が凍りつく。
まさに、「ピキッ!」という音が聞こえんばかりで……。
よ、夜逃げって、
え?
マジ?
全従業員、驚愕。
それもそのはず───……。
「あ、あ、あ、あの野郎! 給料未払いの上、ぜ、ぜ、ぜ、全部放り投げて、
「「「……は、はぁぁぁあああ???!!!」」」
その瞬間、全てを察した中年ズ、元リーマン達は絶叫したッ……!
そして、
ブッチーーーーン!!
「「「ぶぶぶぶ、ぶっ殺してやるぁぁっぁああああああ!!」」」
──ぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああ!!!
普段、あれほど社内で足を引っ張りあい、互いに貶めあっていたクソ同僚たち全員の心と絶叫がシンクロし、社長への殺意へ塗りつぶされた瞬間。
それは奇しくも、ブラックな会社で初めて彼らの心が一つに重なった最初で最後のひと時だ。
……そう、皮肉にも会社がなくなったこの時が、唯一にして無二の
「「「ふ、ふ、ふっざけんじゃねーーーーーーーーーー!!」」」
うぎゃぁぁぁぁああああ!!
ぎゃあああああああああ!!
「──────「ww」じゃねーーーーーーーーだろーーーがーーーーーー!!」
「あ、あああ、あの野郎。夜のうちに社内のもの全部売っ払ってやがる!!」
「クソっ! これじゃ、給料未払いどころか、退職一時金もねじゃねーーーーーかーーーーーーーー!!」
『社長』が書きなぐった
そこでガランドウになった屋内をみて再び絶叫。
PC、コピー機、各種ハイテク器材をはじめ、
トイレットペーパーまでないと来てる……。
その怨嗟の声にいやおうなく知らされる事実に愕然とする高橋。
社内に突入した同僚を尻目に入口でガックリと膝をつく。
(……マ、マジかよ)
この不況の時代に30代にして突如無職となることが決定……??
し、しかも、今後一切の保証なしの夜逃げ倒産と来たものだ。
「マジかよー……!」
退職金?……あるわけねーよ。
一時金?……なにそれ?
今月の給料?……よ、よこせや!
「「「せめて今月分だけは……! それはだけはせめてぇぇぇええ!」」」
───うぎゃああああああああああ!!
しかし、給料を振り込む責任者はいずこかへ。
彼らの声はどこに届くことはなかった。
「これからどーしろってんだおぉぉぉおおおおおおおお!!」
うぉぉぉぉおおおおん……!
大泣きする高橋。
「「「うわーん! 泣くなよぉぉぉお!」」」
同調する同僚たち。
ある晴れた日の早朝に、いい年子いた大人たちの泣き叫ぶ声がしばらく響いていたとかなんとか……。
うわぁぁっぁぁん!
うわぁっぁああん!!
………………。
…………。
不況のさなか。
よくある光景──……。
高橋要、30超え。本日無職になる──────。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます