①白亜の果ての獣達-セリオンズ-
十九六
プロット
◯参考作品
ウィリアム・ブレイク『四人のゾアたち』
ジョン・ミルトン『失楽園』
フリードリヒ・ニーチェ『ツァラトゥストラはかく語りき』『力への意志』他複数
正田崇『PARADISE LOST』
◯世界観
舞台はほとんど現代と同じだが、世界が1つの教導国家「アルビオン」に統一されているという点が異なる。
アルビオンには一切の争いや喧噪などは存在しない。まさしく平和としか言えない、純白の理想国家であった。
だがしかし、その実態は人々の持つ個々の思想を弾圧し、画一的なものにするというディストピアである。
アルビオンに歯向かうもの、やり方に異を唱えるもの、ほんの少し疑念を抱いたものすら、この世界では人間として扱われない。
そういった者達はまとめて
あまりにも理不尽な圧政を強いるアルビオンに対し、アルロの住人達が反逆を決意する部分から物語は始まる。
他に特筆すべき世界観としては、現代舞台のファンタジーらしく人々が異能を扱える。
アルビオンに反抗する側、つまり「突出した"個"を持つ人間」は、その個性に由来した特殊能力『
作中では主に超常現象を引き起こしたり、武器に変化させて戦うなどを行う。
対するアルビオン側は、現代技術を超えた超科学技術により実現した異能『
以下、用語解説。
■アルビオン
いつから存在するかも分からないほど過去から存在する超巨大国家。
大陸を超えて世界中を1つに統一している。技術レベルや人々の生活レベルは基本的には現代と変わらない。
国家の首都たる役割を果たす1つの島『エデン』を中心にして、距離が近い順にベウラ、ジェネレイションと住民たちは階層分けされている。
エデンに近しい程に人々は幸福を享受し、生活のレベルも高い。エデンの生活は想像もつかない程に幸福であると噂されている。
人々同士が争う事などなく、差別や偏見もない。住民全てが笑顔に満ち溢れている。
……が、その真実は徹底的なまでに住民の"個"を排除する独裁的なディストピアで成り立っている監視国家である。
差別が存在しないのは、そもそも住民に個を持つ事が許されないから。住民たちは常にアルビオンの中枢「エデン」より派遣された警護兵たちに生活を監視されている。
そして、そういった個を持った人間……アルビオンの在り方に疑念を抱いたり、反感を持った人間は、エデンから最も遠い隔離地帯『アルロ』へと送られる。
警護兵たちの監視はエデンに近しい程に厳しく、また法律もエデンに近いほど厳しくなる。法律は「幸福に生きる」ため必要な行為や思想が厳格に定められており、破った人間には厳しい罰が待ち受ける。
(アルロへの追放は最も軽い処罰であり、死を以ても償われぬ罪なども中には存在する)
それらの罰を行使する存在は『
■アルロ
アルビオンの最も外側に存在する隔離地帯。
主に"個性"を持った人間が追放される場所であり、表向きは「規律を乱しかねない人々の矯正施設」のような扱われ方をされている。
だがその実態は無法者の集う暗黒の街となっており、弱肉強食。荒くれ者や盗賊、殺人鬼などと言った存在たちがそこら中に存在している。
環境も非常に悪く、住民たちが各々好きに開発・開拓しているがために空気は薄汚れ、清浄な水や土も少ない。そのため身体を壊して死ぬ人間も多い。
この場に追放され、住まう人間たちは
基本的には協調などと最も縁遠い人間たちの住む場所だが、中には徒党を組んで活動する人種もいる。
そういった者達はそれぞれ結託したり、裏切ったり、食らい合いながら勢力を伸ばし、アルロにおける支配権を奪い合う。
現在はユリゼンが率いるチーム『セリオンズ』が勢力を次々伸ばしており、個性豊かな悪党たちを束ねている。
■セリオンズ
ユリゼンが率いる、
アルビオンによる支配を打ち砕くという目標を掲げているが、大半のアルロの住人たちは本気にしていない。
だが、ユリゼンの野望に惹かれた者たちや、彼にぶちのめされて虜になったもの、彼の命を狙うもの等が集まり気付けば徒党となっていた。
「秩序ある悪」をモットーとしており、無秩序な略奪や弱き者を狙う殺人鬼を諫め、拘束する自警団のような役割を担い勢力を伸ばしている。
自分勝手でアウトローが多い
■
非常に"個"が強い人間が稀に起こす超常現象。
その当人が胸に強く思い浮かべる"個性"を具現化した影を出現させ、戦闘や諜報に用いる事が出来る。
基本的に動物、獣の姿をしており、同時にその動物に由来する、あるいは紐づけられる特異な力を発揮できる。
強力な能力になると、竜などの現実に存在しない動物の姿を取る。
■
アルビオンから派遣された警護兵や
人類が今まで作り出した技術や兵器、あるいは過去に名を残した偉人の偉業に由来する特殊な力を発揮できる。
アルビオンの中心部であるエデンで改造される事でこの力を得れるそうだが詳細は不明。曰く『主からの無償の愛』。
その言葉に由来するからかは不明だが、これを用いる者たちは皆等しく『愛』に関する二つ名を冠する。
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◯主要キャラクター
■フリードリヒ・ユリゼン
・ビジュアル
顔に大きな傷跡を残す、一見すると残忍そうな美丈夫。顔立ちはやや荒々しい。
・性格
悪のカリスマ。ただ、あくまで「教導国家アルビオンにとっての」悪であり、辞書的な意味での悪ではない。
豪快で器が大きく、あらゆる人間の個性や行いを「それも良し」と許容する度量を持ち合わせている。
だが、他者を傷付ける者や調和を乱す者に対しては義憤を抱き、その身を以てして行いを止めようとする。
「悪ならば、己の悪に責任を持て」というポリシーを一貫して持っており、その信念のもとにアルロの住人たちを束ね挙げている。
・台詞イメージ
「悪とはなんだ? まさか、貴様らに都合が悪い事を、悪と喧伝しているわけではあるまいな?」
「悔しいならば足掻け! 藻掻け! そして立ち上がれ! 貴様にはその権利がある。意義がある! そして此処では、その全てが許される」
・物語的立ち位置
主人公。大勢の個性豊かな
世界観的には悪であるが、読者の視点から見れば正義という立場に立つ。
迷う仲間たちの背中を押したり、行き過ぎた行動を諫める兄貴分という役割も持ちつつ、反逆を先導する。
だが同時に、仲間たちに支えられる立場でもあり、彼らの持つ心を学びながらも人間的に成長していく。
モチーフは『失楽園』の堕天使ルシファー、並びに『四人のゾアたち』における理性の具現であるユリゼン。
■ヴェイラ・クラウディウス
・ビジュアル
血に塗れた装飾具を纏っていた、傷だらけの少女。保護された後は白無垢の簡素な衣服を纏う。
・性格
臆病で保守的。自分には何もできないと考える、何処にでもいるような1人の少女。
だが同時に、アルビオンのやり方に対して疑念を抱いており、そしてその疑いを曲げたくないという頑固さも持ち合わせる。
虚偽や隠し事といったものを許さず、何処までも真実を知りたいという執念も持ち、それ故に
幼い頃に疾走した父を探しており、父を探す為にユリゼンを始めとした
好きなものは歌。だが盛り上がりに欠け、聞いていると眠くなってしまう。他には、その人の個性が出た料理や芸術などが好き。
・台詞イメージ
「私は辿り着いてみせる。真実のある場所へ。だってそこに、父さんがいる気がするから!」
・物語的立ち位置
ヒロイン、というより語り部。ユリゼンや他の
読者が共感できるような等身大のキャラクターであり、読者に世界観やキャラクターを教え、感情移入をさせる。
そういう意味では彼女も主人公といえるかもしれない。
モチーフは『四人のゾアたち』における1人の女性ヴェイラ。他複数。
■ロス・キャンベル
・ビジュアル
天真爛漫な少年。だが、戦いにおける身のこなしなどには天性の才を見せる。
・性格
ユリゼンに強く憧れる
物心つく以前からアルロに生き、ユリゼンによって守られて生きてきた。
そのためユリゼンを親のように慕っており、流れ着いた人々がみな悲観的なアルロの中でも明るく過ごしている。
年齢が近しいヴェイラとは、友達になろうとよく会話をしようと試みる。
・台詞イメージ
「大丈夫、安心して。だってここには、ユリゼンがいるんだから!」
・物語的立ち位置
見知らぬ地に来て不安なヒロインであるヴェイラに、心を開かせる
他にも世界観を説明したり、一般的な感性から驚いたりと、読者が感情移入しやすいキャラクターを目指す。
モチーフは『四人のゾアたち』における登場人物ロスなど。
■オキュロフィリア
・ビジュアル
掌や額などに無数の目を埋め込んだ、奇怪な人間。
・性格
高い実力を持ち、罪を犯したアルビオンやアルロの人間に対して刑を執行する『
その地位の為か、高慢で他者を見下す傾向が強く、プライドも高い。同時に、アルビオンという国に対する忠誠心は病的なまでに高い。
身体中に埋め込んだ無数の眼球は、『薄汚い罪人を残さず"掃除"したい』という彼の気持ちの現れでもある。
・台詞イメージ
「薄汚い獣風情が……。純白なるアルビオンの大地を穢してェ! 許されると思っているのかァァァ!!」
・物語的立ち位置
典型的なヴィランであると同時に、この世界の異常性を説明する役割も持つキャラクター。
■ルヴァ・クラウディウス
・物語的立ち位置
ヴェイラの父親。アルビオンの在り方に疑念を抱き調査していたが、行方不明となる。
彼を探すと同時に、アルビオンの真実を暴くというのがヴェイラの目標となる。
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◯物語構成
文庫ライトノベルでの1巻において、序章+3章+エピローグの全5章構成予定。
大まかなストーリーとしては、ヴェイラとユリゼン、およびユリゼンの率いる
物語全体を通しては「自己の強さとの向き合い方」をテーマにしたいと考えているので、1巻ではヴェイラが己の願い=父と再会したいという思いに気付くまでを書くイメージ。
■序章
まずはアルビオンの解説をヴェイラ視点で語る。
そこから暴漢に追われて逃走するヴェイラのシーンに移る。
法が存在せず、死と隣り合わせの治外法権地帯アルロにいる事を地の文で説明。
なぜこうなったのか? とヴェイラの回想。アルビオンの片田舎、ジェネレイションのある地域から追放される過程を描く。
ヴェイラの父であるルヴァは非常に自由を大切にする人物であり、アルビオンの平和を願う精神には賛同しながらも、そのやり方には異議を唱えていた。
やがてルヴァは、アルビオンの成立過程を調査するがその過程で行方を眩ませる。父を失ったヴェイラは、寂しさを父の遺した書物を読み紛らわせた。
ある日、そんな書物からアルビオンの王は誰なのか? という疑念を抱き母親に質問してしまう。それにより彼女は「アルビオンに疑念を抱いた」として連行される。
これは何かの間違いだと思いながらも歯向かう事は出来ず、彼女は何もできないままにアルロへと送られ
どうしてこんなことに、と悲しみ、くじけそうになる彼女の前にユリゼンが駆け付ける。
彼は自らの持つ異能である
■1章
ヴェイラはユリゼンの戦闘の余波で気絶してしまうが、ユリゼンが率いる『セリオンズ』のアジトに匿われる。
初めて見る
だが実際に触れあう
特にその中でも最年少で年齢が近い少年、ロス・キャンベルは天真爛漫にヴェイラと会話をし、このアルロの現状を教えてくれる。
だがアルロの実態は非常に環境汚染が進んでおり、初めて住まうヴェイラにとっては過酷な環境であった。
見知らぬ人しかいない場所と過酷な環境は、次第にヴェイラの精神を疲弊させていき、やがて「これは何かの間違いだ」という考えを抱かせる。
話せばきっと、自分は元の家に戻れる。そう考えた彼女はひっそりとセリオンズのアジトを抜け出し、アルロからジェネレイション地域へと侵入する。
■2章
ヴェイラがジェネレイションへと侵入すると、即座に大騒ぎになった。
1度アルビオンからアルロへと追放された人間は
アルビオンは人間が住まう大地であり、そこに穢れた
自分はただ、アルビオンの首脳はどのような人物なのか興味を持っただけだ。父と同じように、ただ知りたかっただけだと訴える。
だが人々はそんな彼女に石を投げ、差別的な言動を投げかける。この世界では、アルビオンの中枢を知ろうとするだけで大罪となるのだ。
諦めずに訴えるヴェイラだったが、通りがかった母親にすら差別的な言葉を投げかけられ絶望する。駆け付ける、死罪を執行する『
死が目前に迫ったヴェイラを救ったのは、アルロにいるはずの「セリオンズ」たち、そしてそのリーダーであるユリゼンであった。
■3章
悍ましさを感じるセリオンズの面々だが、真に醜悪なのは個性を持つ
個性なく安寧を享受さえすれば、日々を幸せに生きられる。争いも差別も偏見も、全ては個性が生み出す人間のバグであるとオキュロフィリアは説く。
それに対しヴェイラは、知ろうとする事すらも罪だというのかと問う。オキュロフィリアは笑いながら、知る事は最も重い罪、死よりも重いと告げる。
そして、過去に真実を知った事でその罪を今なお償い続けている男がいるとオキュロフィリアは告げる。それはヴェイラの父に他ならなかった。
アルビオンの圧政の真実を知ったヴェイラは、絶望から崩れ落ちる。そんな彼女を支えるユリゼン。彼はアルビオンの行為に静かな怒りを感じていた。
だが、今まで積もりに積もったユリゼンの持つアルビオンへの怒りにより、
オキュロフィリアは狼狽えながら「私を殺せばアルビオンに楯突くことになる!」「数万を超える
だがユリゼンは聞かない。「元から承知の上だ」と笑い、オキュロフィリアを下す。今此処に、セリオンズたちのアルビオンへの宣戦布告がなされるに至った。
■エピローグ
アルロに戻ったヴェイラは、自分のせいでセリオンズたちが巻き込まれてしまったと謝罪する。
だがユリゼンを始めセリオンズたちは気にしない。何故なら元からアルビオンに対して反旗を翻す予定だったのだから。ただ少し予定が早まっただけだ。
これからどうするかを問うヴェイラに、ひとまずアルビオンの中枢であるエデンを目指すと告げるユリゼン。ヴェイラの脳裏に過ぎったのは、懐かしき父の姿だった。
失踪した父は、アルビオンの中枢に囚われている。オキュロフィリアの言葉が真実ならば助け出したい。そう思った彼女は、気が付けばユリゼンたちに「連れて行って」と懇願していた。
辛い旅になるぞと告げるユリゼンに、毅然と頷くヴェイラ。そんな彼女の姿に「それが"個"を持つって事だ」と笑うユリゼン。
こうして、純白の世界を塗り替える
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