第42話 ダブルデート!?
「ダブルデート!?」
なにそのあまずっぱい単語。
いや、言葉の意味は知ってるけども知識と経験が追いついてない。
アラサー社会人兼ゲームオタク・推しの二次創作に命を掛けていた生前の私には、これ系の単語に全く縁がなかったよね。
ぶっちゃけロゼッタとして過ごす内にだんだんと生前の記憶は薄れてしまっていて、少しずつこの体の現年齢(?)に近づいているような気がしないでもないのだけど、今のところゲーム知識があれば事足りるので別段問題はない。
「お願いロゼッタちゃん! 一緒に付いてきてほしいの!」
「えっと…」
目の前には可愛らしく『お願い』ポーズをしたキャロル先輩がいる。
そうだった、脳内問答している場合じゃなかった。
え、つまりどういうこと? 先輩のデートに私も参加してほしいってこと?? 普通にお邪魔では???
「今週末の建国祭!」
「けんこ…あ! お祭りですか?」
「そうなの!」
あーー!そうだった。思い出した。
今週末珍しく土日揃って学校もお休みかと思ったら祝日だったわ。
特に予定もなかったので、連休中にがっちりと夏までの計画を立てようかと思っていたけど普通に世間一般のイベントのこと、スルーしてたよね。
ていうか、まてよ…建国祭???
『ロゼッタ』の記憶と『私』の記憶をすり合わせて思い出してみる。
たしかこれ夏前のデートイベントってこれにかこ付けたやつじゃなかったっけ??
王子さまはガチで建国祭ネタ、他のキャラもそれに付随する祭りやイベントなどなど…。確かにこの日にいろんなお祭り的なイベントがあったような気がする…。ていうか攻略対象別に場所が違ったやつだったっけ。
「ええとね、ロイド様に誘ってもらったんだけど、私一人じゃ心細くって!!」
やっぱりじゃん!! そして相手はロイド様!
うううう~~~~ん。複雑。
ていうかキャロル先輩ちょっと私に心を許し過ぎじゃないですかね!? ついこの間仲良くなったばかりの後輩、ロゼッタですよ!? ロゼッタは獅子身中の虫だとは思わないんですか!?
…思わないんだろうなあ!! いい人はこれだから!!
「…でもわたくしではなく…その、同級生の御友人などの方が良いのでは?」
「クラスの子にも相談したんだけれど、みんな断られちゃったの!」
あーね。
いやまあ普通は断るよね。
もともと2対2でカップルがいるならともかく。
友達だったら『二人っきりで行ってきなさい。頑張って!』だよね、私だってそう言うと思うわ。しかも相手は紳士で有名なロイド先輩だもの。放っておいても安心だし。
「お願い、ロゼッタちゃん!」
…そんな、神に祈るみたいにしなくても。
でもなんだかなあ、キャロル先輩にこんな風に頼られちゃうと、悪い気がしないっていうかお願い叶えてあげたくなっちゃうんだよな…。
「あの~でもそれってデートじゃないですか? わたくしはお邪魔になっちゃいますよ?」
「お邪魔じゃないよ! 全然、ほんと! ロゼッタちゃんがいてくれたら私も楽しいし! ロゼッタちゃんは生徒会の役員だからロイド様と共通の話題もあるし、二人だけだと緊張しちゃうんだもの、お願い!」
(う~ん…)
…ロイド先輩、これってどういうことなんですかね。好感度高いの?低いの?どっちなの?? それにゲーム中にダブルデートなんて選択肢一度もなかったけれどいいのかなこれ?? バグ?? システム的に大丈夫?
(まいったなあ…)
お二人の仲を取り持てばいいのか邪魔すればいいのか…。
私が一番味方するのはお兄様であることに変わりは無いので、私的には観察し放題だけどいいのかなぁ…。
ロイド先輩はこの件どう思ってるのか聞いてみようか~と少し思ったけどダメだ、あの人は『なら皆で行こう』とか普通に言うわ。
「だからダブルデート! ダブルデートしない!?」
そして振り出しに戻る。
これだからリア充は。そもそも私が誰とデートをするというのだ。
そもそもぼっちの私にデートする相手などいない。
「ほら、ロバート君とかどう?」
「ええっ!? …どうと言われましても、絶対断られますって…それよりむしろっ…!」
(デートするならお兄様と!!!)
っと言いたい気持ちをぐっと我慢。まてまて落ち着いてワタシ。
ダブルデートで兄を連れてくるっていうのもそもそも微妙…ってのもあるけれど、キャロル先輩とロイド先輩のデートを一日中お兄様に見せつけるとかさすがにそれは当て馬的拷問じゃない??? 人間として酷すぎない??
だめです、却下。
しかたない…ダメ元で頼んでみますか…。
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