厨二転生
スカイ
異世界編
第1話 ブラックからの卒業
早速だが……俺は死んでしまった。
『お気の毒ですが貴方は前世でお亡くなりとなりました』
「……はっ?」
頭に浮かぶのは率直な疑問符。
この状況を直ぐに理解しろと言われてできる奴は何人いるのだろうか。
俺はさっきまで都内の駅にいたはずなのに……目が覚めると謎の白い部屋。
目の前にはコスプレのような女神の衣装を着こなしている妙齢の青髪美女。
そしていきなり『貴方は死にました』と言われる。
……何だこのカオスな状況!?
『あぁうん分かってます。いきなりこんなこと言われた所でという話ですよね? 分かります分かります。めっちゃ分かります』
えっなになになになになになに。
何を『君の気持ち分かるよ?』みたいな済ました顔してんだこの人。
いやでも待て、そういえば俺、なんか電車にはねられたような記憶あるぞ。
えっと確か今日も上司に罵倒されて深夜まで残されて……終電に間に合ったけど疲れからコケてそのまま電車に。
「あの……俺って死にました?」
『お気の毒ですが、終電の電車に跳ねられそのまま即死しました』
「あっやっぱり!?」
死んじゃったの俺!?
童貞のまま死んだの!?
いやでも目の前の女性もそう言ってるし、死んでなきゃ何でこんなとこにいるのか説明がつかない。
「あぁ……死んだんすか俺」
『はい、死にましたよ。黒瀬ケンイチ様』
「へっ?」
何で俺の名前を知ってるのこの人……!?
あぁそうだ、俺の名前は黒瀬ケンイチ。
穏やかな人生目指して生きてきたがブラック企業に就職して死にかけていた25歳だ。
……いや自己紹介はいいんだよ、今は何で目の前の女性が俺の名前を知っているかだ。
『申し遅れました。私の名前はスキリア・リビルテッド。一言でいえば女神です』
「め、めが、め、女神?」
『はい女神です、そして貴方は』
俺は死んだ……そして目の前には女神がいる……あれ、それってつまり
「『異世界に行ってもらいます』」
『えっ?』
あっやっぱそうだ異世界転生だコレ!
なんかどっかで見たことある展開だなと思ったらその通りだったよ!
つい女神とハモっちゃったよ!
『あっえっ……何故分かったんですか?』
「ん? あぁ何となくですよ何となく!」
それに多分アレだ、なんか手違いとかで死んじまったパターンだこれはきっと。
『はぁ……まぁいいでしょう。ケンイチ様、貴方は本来死ぬべき寿命半ばにしてお亡くなりになってしまいました。本来は滅多にない事なのですが……時折、女神達のミスにより起きてしまいまして』
はい来た手違いのミスでの死!
そういう系の小説を暇潰しに読んでて良かった全部スッと入ってくる!
『そのような予定外の死を迎えた者に対しては転生させることで第二の人生を歩ませる決まりとなっています。それが神のルール』
神のルールがなんだかは壮大過ぎてよく分からんが……確実に言えるのこと、それは俺にとってチャンスだということ。
『ケンイチ様、大変申し訳ごさいませんでした……こちらの失態で貴方のこれまでの半生を無駄にしてしまって』
「全然いいですよ! 寧ろありがとうございました!」
『はっ? い、いやその前世に未練とかそういうのはないのですか?』
「ないですね全く! あんなクソ人生二度と送りたくありませんね! 一秒でも早く抜け出したかったくらいなんですから!」
ろくに親友や恋人はおらず、親は出来のいい弟に愛情注いで俺はほぼ放置。
高校、大学でも特に何も起きず、就職した企業はブラックそのもの。
今すぐにでも死んでやり直したかった! だからこそこれは千載一遇のチャンス!
嬉しくてたまらない。
だって異世界だよ異世界! 剣とか魔法とかドラゴンとか魔物とかエルフとか獣人とか色々いるんでしょ? 行ってみたいじゃん!
「是非ともお願いします女神様、俺を異世界に転生させて下さい!」
『……本当に宜しいのですか? ガチで』
「勿論です! むしろこんなチャンス逃したら絶対後悔する、さぁ俺を転生させてください!」
『変わった人ですね……大体転生する人は理不尽さに罵倒するのが定番なのですが……まっ、前向きなとこに悪いことはありません』
スキリアというクールな女神はドン引きしつつも、安堵の表情を浮かべる。
俺はきっと変人の反応なんだろうが、相手からすればそれがやりやすいのだろう。
『では早速、転生を始めましょう。貴方が望む異世界へと』
すると俺の足元に巨大な魔方陣が浮かび上がり光り出す。
これが転生の証なのか!? すげぇ、テンション上がってきたぜ!
「あの! それで、その世界ってどんな所なんです!?」
『ランダムです』
「へぇランダムですか! えっ?」
ラ、ランダム……?
えっ何ランダムって?
『簡単に言えば私にも貴方がこれから行く異世界がどうなるかは行ってみないと分からないということです。そして貴方自身どのような姿で転生するのかも』
「……はぁっ!?」
転生させる側が全く分からないって聞いたことないぞ!?
「それってつまり……転生先がどんな世界になってもおかしくないし、転生後の俺の姿が人間だととも限らないと?」
『そうなりますね。人間の姿になれるか、どんな世界で貴方がどのようは立場になるかは運次第。そこまでの融通を効かせる権利は女神にはない』
「この先の未来は誰にも分からないと?」
『そうなりますね……しかしご安心を。どんな立場であれ特典としてその世界の言語能力と強力な能力は付与しますから。ただ幸せになれる保証はありません』
マジかよオイ!?
いや待て落ち着け黒瀬ケンイチ、ここは冷静に、そしてポジティブに考えるんだ。
話的にもしかしたら大魔王になるかもしれないし、虫になるかもしれない。
だが言語と強い力は無条件で貰えるんだ。そう絶望的な話でもない。
あんな地獄の日々から開放されるなら仮に微生物ライフだろうとバッチコーイだ!
「……分かりました、動物だろうと、虫だろうとどんと来いです!」
『その心意気の方がやりやすい。ではケンイチさん、新たな扉を開くとしましょう』
スキリアが指を鳴らすと辺りは太陽よりも明るい光に包まれ始める。
きっと転生の儀式なのだろう。まぁいい、俺の第二の人生の開幕だ!
……そう、その時は希望に溢れてたよ。
まさか転生した姿が世界から狙われる存在になるなんて……思ってもなかった。
そして、最悪の物語に巻き込まれることも全く知らなかったんだ__。
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