3‐28新たなる皇帝の誕生と日蝕
青天に鐘が響きわたった。
即位の儀の始まりを報せる鐘だ。
即位の儀は宮廷にある
民が天壇のまわりを埋めつくし、新たなる皇帝の誕生を待ちわびていた。高官や士族を含めた上級民は最上階の宮殿を取りまき、頭をさげ続けている。彼らは一様に白い礼服をきていた。
ただひとり、青い礼服に身を包んだ
皇帝となるのは錦珠をおいて、ほかにはいない。
万事、錦珠の思惑どおりに進んでいる。
皇帝は崩御し、政敵であった
彼のために敷かれた、皇帝への
後は、
士族や老いた高官たちは敬虔だ。天意という言葉を無条件に信頼している。だから、日蝕という天文現象と儀式の日時をあわせたのだ。
錦珠が日輪を統べる皇帝であると証明すれば、誰もが錦珠の
「
最上階にたどりついた錦珠が民にむかって、語りかけた。
「天の
湧きたつように民の歓声があがった。
「だが、いま、
錦珠は頭のなかで時を測っていた。
さあ、いよいよだ――
「みよ、星の新たな皇帝に日輪すらも跪き、忠誠を誓うであろう」
天がにわかに掻き曇った。
日輪が端から陰りだす。日蝕という現象を知らない民は天異に恐慌する。
新たなる皇帝は日輪をも統べる――宮廷巫官の神託を想いだして、高官も士族も一様に震えあがった。
日輪を奪われて、たちまちに地が
あれほど青かった天が
「
不動なる錦珠の声が響き渡った。
「あなたがたに問う。あなたがたは
民は
士族たちも袖を掲げ、
錦珠が勝ち誇ったように笑む。
刹那。
暗天に
姑娘――
「神の託宣が降りました」
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