3‐5皇帝にふさわしいのはだれか
「
「ええ、まあ」
知っているどころか、商談に連れていかれたことも宣伝を考えたこともあった。
「あれは貿易を通じて、民の暮らしぶりを把握するためになさっていることです。あらゆる物事は連動するものですが、特に
彼が娯楽ではなく、真剣に商売に取り組んでいたのは
「なので、その」
「様々な障害を度外視して論ずるならば……なのですが、ぼくは、
「それは」
わかっています、と
「ぼくがこんなことをいうのは、許されないことです。ぼくを皇帝とするべく働きかけてくれている皆様にも、母様にも、とても失礼なことですから。それに哥様もそれを望まないでしょう」
星辰が喋りながら、ふと視線を移す。
つられて妙も視線を動かせば、飾り窓から、廻廊を渡ってくる
「なので、これはぼくと
「了解です。私、喋る口は堅いので」
(食べる口は緩いけど)
累神が今、皇帝になることを望み、そのために動きだしているのだといったら、星辰はどうするだろうか。意外と助けになってくれるのではないだろうか。
ああ、でもほんとは。
(それも、嘘なんだよな)
皇帝にしてくれと頼んだ時の累神は、あきらかに嘘をついていた。あの嘘がどういったものなのかは妙にはわからない。心理は読めても考えが読めるわけではないからだ。
「新しい書物も取ってきた。ここにおいていいか」
「わあ、ありがとうございます、
「それにしてもまた、難しい書物を選んだな」
「一度読み終えたのですが、五年前なので再読したいと想いまして」
「八歳の頃かよ……」
楽しげに喋る累神を眺めつつ、妙は考える。
だとすれば、累神の真の望みとはなんだろうかと。
視線に感づいた累神が振りかえり、口の端をあげて笑いかけてきた。実の弟である星辰にむける微笑と大差のない信頼に満ちた表情が、なぜだか、妙の胸を締めつけた。
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