第122話 おじさん海南鶏飯を楽しむ
海南鶏飯。
シンガポールチキンライスとも呼ばれる料理だ。
その調理方法はシンプルである。
鶏肉を茹で、鶏油で米を炒めて、鶏肉の茹で汁で米を炊く。
茹でた鶏肉は具となり、鶏皮は茹で汁の残りで作るスープにも利用できる。
まさしく余すところなく、鶏肉の旨味を味わう料理なのだ。
「では鶏肉とお米を使った料理を作りたいのですね」
“料理長に確認してきます!”と残して見習いが走っていく。
おじさんはその間にどうせならデザートも作ろうと考えていた。
アジアンデザートで揃えたいところだが、あまりそちらの知識はなかったからだ。
有名なところくらいだが、おじさんの中で閃いたものがひとつあった。
「リーお嬢様、料理長が大丈夫って言ってます!」
「ありがとう。では失礼して」
とおじさんは必要な食材を指示していく。
お嬢様シンパの料理人と見習いたちが、テキパキと動いてくれるのだ。
おじさんは指示をだしつつ、必要な調味料などを錬成していく。
海南鶏飯の肝となるのはソースだと、おじさんは思っている。
このソースをどうすべきか。
あっさりシンプルな香味野菜を使った塩ダレと、柑橘系の果物を使ったさっぱり系のタレ。
そこにトマトと香辛料を使ったチリソースを作る。
お子さま組のことを考えて、辛味を抑えて甘みを多くしたものも作っておいた。
海南鶏飯はできあがるまでに時間がかかる。
空いた時間でおじさんは
愛玉子は台湾を代表するデザートだ。
台湾に自生する
すると種に含まれる成分によって、水がゼリー状になる。
このゼリー状のものにレモンシロップをかけて食べるのだ。
彩りとなるクコの実はないけれど、その点はミント系のハーブで代用できる。
問題は
なのでゼラチンを使ってゼリーを作ることにした。
ゼラチンは動物の骨や腱などに含まれるものだが、そこはおじさんの錬成魔法である。
パパっと作ってしまって、ゼリーを作る。
そう言えば、この国ではゼリーのようなデザートはなかったかな、とおじさんは思う。
おじさんの予想は的中していたようで、料理人たちの中にはメモをとっているものまでいた。
そんなこんなで長粒種のお米を調理したおじさんである。
さっそくとばかりに味見といく。
ぷるぷるとした鶏肉の食感がたまらない。
鶏の味を吸った長粒種のお米もいい。
おじさんもニッコリのできであった。
「料理長もどうぞ」
と、おじさんは愛玉子も少し食べてみる。
こちらもいいできである。
水気が多めのゼリーなので、つるりと入っていく。
レモンシロップの爽やかな香りと甘味がつい後を引く美味しさである。
「こちらも本日のお料理の一品に加えていただけます?」
その日、カラセベド公爵家で新たなるメニューが追加された。
海南鶏飯と愛玉子である。
おじさん的には短粒種のお米を望んでいたのだが無理は言うまい。
長粒種も調理方法さえ間違えなければ美味しくいただけるのだから。
ただおじさんは公爵家の皆から言われてしまった。
食べ過ぎに効く胃薬を作ってほしい、と。
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