第120話 おじさん公爵家邸でアミラを紹介する
宮廷魔法薬師筆頭の部屋を後にしたおじさんは、公爵家のタウンハウスへと帰った。
ここで邪魔が入らなかったのは僥倖と言えるかもしれない。
帰り道は護衛騎士たちが鉄壁のガードを見せる。
「アミラ、もう少しだけ我慢をしてくださいな」
とおじさんは新しい妹の頭をなでるのであった。
「ただいま帰りましたわ」
出迎えにきた侍女たちに挨拶をして、おじさんは母親の居場所を聞く。
母親は地下の実験室にこもっているようだ。
疑似的な魔法生物の研究に勤しんでいるのだろう。
「お母様をサロンにお連れしてくださいな。大事なお話がありますの」
“かしこまりました、お嬢様”
と侍女たちが素早く動いていくのを見つつ、おじさんはサロンへと足を運ぶ。
アミラを隣に座らせて、母親を待つことしばしである。
「リーちゃん!」
サロンの扉があいて、母親が姿をみせる。
手には研究資料であろう紙束を抱えていた。
「ちょっとわからないところがあるんだけど!」
「お母様、少し落ちついてくださいな」
おじさんは母親をなだめながら、おじさんは着席を促す。
「そのお話は後でお付き合いしますから、先にお時間をくださいな」
「そう言えば大事なお話があるって言ってたわね。ってその子のこと?」
おじさんは頷いて姿隠しの魔法をといた。
「この子はアミラと言いますの。建国王様が攻略したダンジョンの
アミラがピタリとおじさんの腕にくっついてくる。
おじさんは事の経緯を説明した。
なぜかなつかれてしまい、契約を結ぶことになったことまで。
ちなみに魔法をぶっ放そうとしたのは内緒である。
「じゃあ今日からうちの子ね」
「アミラちゃん、私はリーちゃんのママ。ヴェロニカ=エルメントラント・カラセベド=クェワよ」
優しげに見つめながら、母親がアミラに自己紹介をする。
「アミラ」
おじさんが促すと、半分身体を隠しながら自己紹介する
「大丈夫ですわ、アミラ」
「ママ……」
「うん。今日から私がアミラちゃんのママ」
と母親がアミラを正面から抱きしめた。
ぎゅうと抱かれて安心したのか、アミラもまた抱きつく。
「お母様、ソニアとメルテジオも呼んでしまっていいでしょうか?」
「そうね、早いうちにすませてしまいましょう」
そんな会話がなされると、侍女たちがスッと動く。
できる侍女たちなのだ。
しばし三人で時間を過ごしていると、弟と妹が姿を見せる。
「ねえさま!」
「姉さま、おかえりなさい」
妹と弟が声をかけてきて、一瞬だけとまる。
アミラを見たからだ。
「メルテジオ、ソニア。この子はアミラですわ」
おじさんが色々と省いて紹介する。
「ふたりとも今日からアミラちゃんも、うちの子よ。ソニアにはお姉ちゃんかしら? メルテジオは見た目が同じくらいね」
「もうひとりのねえさま!」
おじさんちょっと不安だったのだ。
妹がダダをこねないか。
知らない人を見て、家族と言われても受けいれるのが難しいかと思っていた。
しかしそれは杞憂だったようだ。
妹はおじさんが思っているよりも大物かもしれない。
さっそく“ソニアです”と挨拶をして、抱きついている。
「メルテジオ=ティブルシオ・カラセベド=クェワです。よろしくね」
弟も落ちついたものだ。
年下組はさっそくおじさんのゲームで遊ぶことにしたようだ。
もうきゃっきゃっという声が聞こえていた。
「ソニアもメルテジオも受けいれてくれましたわ」
「そんなことを心配していたの? 大丈夫よ、リーちゃん」
“それよりも”と母親は続けた。
「資料のここなんだけどね」
と資料をバサリと机の上に置く。
どうにもおじさんの家族は、皆、大物のようだ。
これが貴族というものかとおじさんは思う。
自分もその貴族の令嬢だということは、すっぱり棚にあげてだ。
その後はたっぷりと母親と議論しつつ、疑似的な魔法生物への理解を深めるのであった。
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