第95話 おじさん宝物庫の鍵を開ける
おじさんと国王、宰相の三人で宝物庫に入る。
その扉は奥まった場所にあった。
歴史こそあるのだろうが、ごくふつうな見た目の木製の扉だ。
おじさんは国王に鍵を渡して、開けてもらおうと思った。
なんとなくそうした方がいいかな、と考えたのだ。
だが国王からは、“リーが開けなさい”と返ってきた。
おじさんが代表して鍵を扉に差しこむ。
扉のむこうにあったのは、国王の執務室と似た感じの部屋であった。
お宝の気配などはない。
大きな机と壁際に配置された書架が目につくくらいである。
「建国王陛下の部屋か……」
感慨深そうに国王がつぶやく。
宰相は無言である。
おじさんはと言うと、書架の前に移動していた。
どんな本がならんでいるのか、純粋に興味があったからだ。
書棚の本はその人の人格を映す鏡のようなものである。
「んん……錬成魔法関連が多いですわね」
これは自分だけでは判断がつきそうにないとおじさんは思った。
そこで
「陛下、うちの子を召喚してもよろしいですか?」
「噂の
国王よりも宰相の方が食いついてくる。
そう言えば、国王や宰相の前で召喚するのは初めてかとおじさんは思う。
「トリちゃん!」
おじさんの声とともに足下に魔法陣がクルクルと回転しながら現れる。
『うむ、
総革張りのムダに大きな本。
その表紙にある七色に輝く宝石が明滅している。
「おお! なんと神々しい」
宰相が目を輝かせて言う。
『聞いてくれたか、我が主よ。あれだ、あれが正解だぞ』
どこか“どやっ”という声音である。
それが無性にイラッときたおじさんであった。
「そんなことよりトリちゃん、ここにある本を見てほしいのですわ」
『そんなことって……』
おじさんに軽く流されてしまったトリスメギストスであった。
それでも気を取りなおして、書架にならんでいる本を観察する。
『約四割ほどが錬成魔法関連であるな。三割が現在では失伝している魔法関連。二割が国政に関するもので、残りの一割が私的な日記か』
「陛下、宰相閣下。国政関連の本はお持ちくださいな。わたくしよりもお二方がお持ちになられた方がいいと思いますの」
「確かに国政関連であるのなら、そうであろうな。うむ。ありがたく頂戴しよう」
国王がすんなりと肯定した後で、宰相が続ける。
「いいのですか?」
「かまいませんわ」
とおじさんが首肯した。
「残りについてはわたくしが管理させていただきますが、その成果についてはお父様をつうじて報告をあげますわ」
「こちらとしてはかまわないが、忙しくなるんじゃないのかい?」
「大丈夫ですの。トリちゃんがいますから」
宰相の問いにおじさんは、ちらりとトリスメギストスを見ながら答える。
『わはははは。主よ、文書の管理は我が最も得意とするところ。十全にこなしてみせようぞ』
おじさんの掌でコロコロされるトリスメギストスであった。
宰相は姪が神器を尻に敷いているのを見て、やはり妹の血が濃いと思ったのである。
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