第67話 おじさん妹とゲームに興じる
学園でちょっとしたショックをうけたおじさんであったが、
男性講師からは“すぐに認められるだろう”とのお墨付きも得たのである。
そんなこんながあった後の休日だ。
おじさんは少し気晴らしがしたかった。
ただ訓練場にて魔法をぶっ放しては前回の二の舞である。
確かにあの後で学園長と魔法談義をして、新しい知見を得たのも事実だ。
しかしまだ思う存分に撃てるほど、魔法のデチューンは完成していないのだった。
そんなおじさんが気晴らしにと考えたのが、いわゆるボードゲームである。
幼い頃には、既にテレビゲームはあった。
しかし苦労続きの前世ではとんと縁がなかったのである。
そんなおじさんではあるが、ボードゲームは好きだった。
なにせ自分で考えることもできるし、紙とペンがあれば遊べるものも多かったからだ。
お手製のサイコロを作って、ひとりでコロコロしていた記憶がよみがえる。
ほんの少しだけ涙がでちゃいそうになるおじさんであった。
ということで。
おじさんは自室で錬成魔法を駆使して、せっせとゲームを作っていたのだ。
前世で親しんでいたゲームや、やってみたいと思っていたものである。
それをこちらでも馴染みやすいようにアレンジした。
弟妹たちはまだ幼い。
特に妹はまだ未就学児童の年齢である。
そんな年齢でも楽しめるシンプルなものだ。
あと大人用にもいくつかの用意をしてみた。
「ねえさま、なにしてるの?」
おじさんがゲームを作り終えたところで、タイミング良く妹が顔を見せた。
妹の腕にはクリソベリルに似たぬいぐるみが抱かれている。
おじさんが新しくプレゼントしたものだ。
「ソニア、こちらへいらっしゃい」
手招きすると、トコトコとやってくる妹である。
そのままおじさんの膝の上にストンと腰をおろす。
小さな身体を抱きしめながら、おじさんは妹を遊びに誘う。
「ゲームでもして遊びましょう」
「げーむ?」
「遊びのことですわ」
“遊び”と聞いて妹の目が輝いた。
おじさんはそこで先ほどから作っていたゲームのひとつを取りだした。
「ソニア、このゲームはこうやって遊ぶのよ」
おじさんが取りだしたのは、卓上サイズのボウリングである。
木製のボウリング台とミニチュアサイズで再現されたピンの造形が見事だ。
当たったピンが散らばらないように、ガードになる部分もつけていた。
当然レーンの両端にはガターの溝も彫ってある。
おじさんは芸が細かいのだ。
さらにおじさんが持てる技術の粋をこめて作った木製真球である。
この真球を乗せるための傾斜台もあるのだが、こちらは様々な角度に調整できるのだ。
かなりこだわりの卓上ボウリングであった。
ちなみにおじさんの能力をもってしても、完全な真球は作れないことがわかった。
平面との接地面積がゼロになることはなかったのだ。
とは言え、かなりの精度の高さを誇っている。
ピンをピラミッド状にならべて、ボールをセットする。
そしておじさんはソニアにルールをかんたんに説明していく。
「この玉を転がしてピンを倒すの。できる?」
「できる!」
ソニアがボールを転がすと、見事にピンに当たる。
だが十本の内、四本残ってしまった。
“きゃあ!”と声をあげてはしゃぐ妹の姿は微笑ましいものがあった。
「ソニア、次で残ったピンを倒すのよ」
倒れたピンをおじさんが取り除いてやって、2回目の挑戦だ。
幸いにもスプリットにはなっていない。
右端に三本のピンがかたまっている。
「ねえさま、いくよ?」
ソニアが傾斜台を調整して、ボールを転がした。
しかしシビアに狙いすぎた。
ボールはガターになってしまう。
「やあ! そっちいっちゃだめ!」
妹が真剣になっている姿におじさんは満足の笑みをうかべたのであった。
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