第20話 おじさん国王陛下に謁見する



 明けて翌日のことである。

 朝食もログハウスでとったあと、おじさんは祖父母とともに馬車を走らせていた。

 もちろん馬車はおじさんが作ったキャンピングカーもどきのゴーレム馬車である。


「この馬車ぜんぜん揺れないわ」


 祖母が笑いながら言う。

 昨日あまりにもさらっと言われて流してしまったが、おじさんは祖母が王族出身だと知らなかった。

 先代国王の妹が祖母である。

 つまり現国王もおじさんの父親も祖母からすると甥っ子にあたるわけだ。

 

 ちなみに祖父母の間にも子どもはいたのだが夭折している。

 その後に子どもができなかったことから、おじさんの父親が養子に入ったのだ。

 おじさんの感覚からすると、好悪は別として婚約者が王太子というのは血が濃すぎないかとも思う。

 もっと言えば他の貴族から文句は出ないのか、ともだ。


 貴族社会はドロドロした魑魅魍魎が棲む世界。

 そんなイメージしかおじさんは持っていない。

 自分がその貴族であることをまるっと忘れているおじさんである。


 ただ祖父によると、この国にある三つの公爵家と王家は互いに補完するような仲らしい。

 今まで気にしたことはなかったのだが、おじさんの母親はラケーリヌ公爵家の三女なのだ。

 ラケーリヌ公爵家はこの国の北を治める家である。

 ちなみにカラセベド公爵家は南西地域を、残りのサムディオ公爵家が南東地域を治めている。

 王家は中央地域を直轄領としているのだ。


 この三公爵家の補佐をするのが、各家に二つずつついている侯爵家になる。

 おじさんの友人であるアルベルタ嬢の実家、フィリペッティ侯爵家はラケーリヌ公爵家と近しい家だ。


「リーちゃん、このゴーレム馬車も予備があるの?」


「ございますわ。それに今回の野営訓練に用いる許可を得るため、学園側とも交渉しましたの。学園側に三台納品することで許可をいただきましたわ。ついでに商会でも売り出そうと思っておりますの。ついてはお祖父様とお祖母様にもご協力をいただきたく思いますわ」


 おじさんの問いに祖父母が笑顔になった。


「うちの領地で量産させればいいのね? ふふ……シャンプーにコンディショナー、あと石けんもあるし大変ね」


「じゃがうちの領地の特産品が一気に増えることになるぞ。こりゃ笑いがとまらんわ」


「お世話になりますわ。ただ量産品はそれなりに機能を落としたものになるでしょうけど」


「それは仕方ないわね。リーちゃん、今も予備を持っているの?」


「王家への献上品としてですね? もちろん用意してございますわ」


 “よろしい”と祖母が大きく頷いた。


 つつがなく王城へとついたおじさん一行は、そのまま謁見の間にとおされた。

 挨拶もそこそこに祖父母が主導してゴーレム馬車を献上する。

 おじさんの出番はほとんどなかった。


 しかし最後の最後でおじさんに爆弾が落ちる。

 謁見を終えて下がろうとしたときだった。


「妃のことで相談があるのだが……」


 国王陛下の言葉におじさんたちは首肯した。

 父親によく似た国王陛下は、おじさんにとって放っておけない存在でもある。

 そしておじさんたちは内密な話をするための部屋に通されたのだ。


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