第7話 おじさん聖女と邂逅する
その日。
アメスベルタ王立高等学園はひとりの新入生を迎えていた。
学園が始まるのは四月だが、およそ一ヶ月ほど遅れての入学である。
中途半端な時期に受けいれなどしない学園だが、その生徒は神託の聖女なのであった。
王国東部にある農村の出身だが、神託の儀によって聖女として認められた少女がいた。
その少女は親元を離れ、東部を治めるブルーノ=アナリタ・ワサ・コントレラス侯爵の養女となったのである。
七年かけて神殿で修行を積み、この春から学園へとかよう予定であったのだ。
ただ王国西部で凶悪なアンデッドが出現し、それの討伐へと聖女が派遣されることになった。
故に特別な措置が学園でもとられたのだ。
神託の聖女。
十四歳にしては幼さの残る顔立ちの少女である。
つるんとした顔にペタンとした胸、ストーンとした体型である。
略してつるぺたストーン。
決してありがたみのない秘宝の名前ではない。
愛らしい顔立ちをした少女は学園でも好意をもって迎え入れられたはずだった。
実際には男子どもがはしゃいでいただけで、女子からすれば“ふぅん”といった程度だ。
なぜなら彼女たちには、超聖女とも言えるアイドルがいたからである。
一般的に聖女と言えばスター扱いされるものだ。
なにせステータスの称号に聖女とつくのだから。
女神からの祝福ではなく、加護を持つ数少ない人物でもある。
しかし学園には彼女がいる。
リー=アーリーチャー・カラセベド=クェワ。
彼女は入学して一ヶ月という短い時間ながらも、学園中の女子たちの憧れになっていた。
いや既に女神として信仰するほどの思いを秘めているものもいる。
「はじめまして王太子殿下。お噂ではうかがっていましたけど、とっても素敵ですのね」
聖女の言葉に鼻の下を伸ばす王太子。
その言葉に王太子の取り巻きが悔しそうな表情をみせる。
反対に女子たちは失望していた。
入学して早々に男あさりかよ、と。
おじさんはそんな風には思わなかった。
いいぞ、もっとやれと考えていたのだ。
自分の婚約者に粉をかける女狐を応援したのだ。
おじさんは王太子との婚約をなんとかしたかったから。
ただ婚約の破棄など絶望的な望みであった。
いくら優しい両親であっても、それだけは対応してくれないだろう。
既に公となっていることで、破棄をするなど面子の問題もあるからだ。
だからおじさんは半ば諦めていた。
ただなんとしても抱かれたくはない。
そんな思いから、おじさんは研究にいそしんでいたのだ。
男を不能にする薬を開発するために。
発想がどこか斜め上をいくおじさんである。
そこへ王太子に粉をかける女狐の登場である。
おじさんが応援するのも致し方ないのだった。
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