第11話 襲撃(2)
「こんばんはー。夜分ごめんなさいよっと」
道場内の時間が止まる。
「おい。 あの中に
「い、いや。 全く知らない。
金髪の男、タツトラが集団の中に入ってきて、道場内を見回す。
「……お取り込み中?」
「ああ!? なんなんだてめーは!? 何しにきたんだよ!?」
「俺は
「ここには武命はいねえってよ。 わかったらさっさと帰れ」 頭目が言う。
「あー……。 じゃあ帰るわ。邪魔したな」 タツトラは面倒臭そうに
「ボス。 女の子が酷い目に遭わされてるみたいだけど、助けないの?」
パーカーの上にスーツを着た金髪の女性、アビーが進言する。
「あー。 俺は真のフェミニストだから、女だからという理由では助けないんだ」
「そう! じゃあ私が個人的な理由で戦うよ。 ボスはホテルに帰って寝てな!」
「おお……マジか。 そうか、そうか。 友達が喧嘩するって言うならよ~、助けに入るのは当然の事だよなぁ?」
タツトラが道場内に戻ってくる。 スーツの青年がため息をつく。
「て言うわけで、てめえらみんな死にやがれ!」 タツトラは棒を持って構える。
木刀や棒を持ったチンピラにはタツトラとアリスが当たる。
ナイフや警棒のようなリーチの短い武器には青年とアビーが当たることになる。
アリスは道場内に置かれている杖を拾いに行った。
「この杖、借りますね~」 杖を拾おうとするアリスの
「また女が増えたぜ! 今夜はお楽しみだな!」
男の手首は捻られ、まるで肩まで極められたかのようだ。男の仲間が助けに来る。
「よいしょ」 アリスは男の手関節を極めたままお辞儀をする。男は手首の痛みと、肩に重さを一気に感じて前方に倒れ込む。助けに来た男の仲間と衝突する。
パッと手を離すとアリスは何事もなかったかのように杖を借りて、敵に撃ちかかる。
スーツの青年は回し蹴りでチンピラのナイフを弾き飛ばす。続けて左ジャブから左フックを叩き込む。
アビーは敵の男の警棒による斬り込みを、避けながら横回転して加速する。ローリングソバットを男の顔面に叩き込む。
タツトラは一人で二人のチンピラを相手にしていた。流石に分が悪く防戦一方だ。
(ちっ、流石に手数が足りねえ。一、二撃もらう覚悟でやるしかねえかな?)
タツトラが覚悟を決めようとしたその時、玄関から青年が駆けてきてチンピラに飛び蹴りを入れる。
青年は革ジャンにイージーパンツの体育会系だ。落ちていた木刀を拾って構える。
「これは一体どういう騒ぎだ!?」
「女の子がチンピラに
「フェミ……? そうか、助かった! ありがとう!」
篝を抑えつけていた男も加勢してくる。敵数が減った篝は、自分の上に乗っている男に
「なんだ! また男が増えたぞ!?」 チンピラの頭目は焦っている。
「武命! やっと帰ってきた!」 母親が声をあげる。
「!?あいつが
頭目が怒鳴りながら武命へと近づいていく。混戦状態だった道場内が静まり、皆の視線が二人へ集中する。
「お前がリキオさんを倒した男か!?」
「リキオさん?
「そうか……!! 武命、これは仇討ちなんだよ!」 頭目が怒声を上げる。
「はあ~」
「なんだその態度は!? てめえ!舐めてんの……」
「やめんか! おまえら!!」
道場内にとてつもない大声が響きわたる。土浦力男が道場内に入ってくる。
「リ、リキオさん!?」 頭目が唖然とする。
「俺は今日、武命と会っていたんだよ。 お前らが報復とか
「お、俺らはリキオさんの為と思って……」
「そういうのは人の為にはならねえってんだよ!」
「
「は、はい。 私も、リーナちゃんも、お母さんも無事です」
「それならよかった。 けど、どうして裸なんだ?」
「は、裸じゃないです! ブラもパンツもしてます!」
「おにいちゃーん、怖かったよお! 遅いよ、バカ!!」リイナが抱きついてくる。
「武命!あんたが最近やってる事、ちゃんと説明しなさいよ」 母親は怒っている。
「ああ……。 ごめん二人とも。 ちゃんと説明するよ」
そこにリキオがやってきて、頭を深く下げる。
「皆さん、此度はウチの者がご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした! 家屋と道場の修繕と、慰謝料は私が支払います。 許してくれと言える立場では無いのは承知しているが、どうかお許しいただきたい」
「…………」 リイナと母親は黙っている。
「……また来ます」
リキオはもう一度頭を下げて、チンピラ達を連れて帰って行った。
今度はタツトラ達がやってくる。
「お前が
「タツトラ、みんなを助けてくれてありがとう。 『枝打ち』の一人だったのか」
「ありがたいって思うなら、俺と戦ってくれよ!
______________________________________
道場はボロボロだし、また邪魔が入るかもしれない。対等な条件で戦うため、香取家の私有地である裏山の稽古場を使うことにした。
結局、香取家の敷地内だが、挑戦者として了承してくれた。疑われるまでもなく罠など仕掛けない。
「わお! 今日はお鍋ですね!」 アビーが掃除したての香取家の食卓につく。
「かーちゃん、最近鍋料理多いね」
「鍋だったら、ガーっと作って、後は皆で
「それで? なんでアビーがここにいるんだ?」 武命は投げやりに質問する。
「女の子が襲われたんですよ? 今夜は怖くて一人じゃ寝れないでしょうから、私が一緒に寝てあげます!」 ね!? と、リイナにウィンクする。
「え? あ、アビーさん、ありがとう」 リイナは今だに元気がない。
「怖かったわね! リーナちゃん!」 アビーがリイナにハグして
「
「カガリは、タケルと寝るのでしょう?」
「「ゴホッ! ゲホッ!」」 リイナと篝がむせる。 食事中になんて話してんだ。
入浴後に居間へ行くとアビー、リイナ、篝が
「アビーはすごいな。 一応、俺達は敵同士のはずだけど、リーナなんかは完全にアビーに
「お
「うふふっ。リーナ、タケ。 私は私なりの理由で戦っているのよ」
「アビーなりの理由?」 タケこと、武命も炬燵に入る。
「私が子供の頃、友達が性犯罪に遭ったの。友達は心に傷を負ってしまった。 その時から私は、自分と仲間を助ける為に強くなる事にしたの」
「アビーちゃん……」 リイナが涙ぐんでいる。
「それでどうして居合なんだ?」
「実践的だし、『
「それって『鞘の内』だっけ?」
「刀を抜く前に勝つ
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