第4話 琉球空手?東京へ
那覇から鹿児島行きのフェリー内。
今年40歳になったが、体格はバランス良く筋肉質な体格で、ワークシャツにワークパンツという質素ながら動きやすい服装。真ん中分けの髪型で、真面目そうな中年と言った印象だ。
2等寝台の個室一人部屋。ベッドと机しか無い狭い部屋だが、それが良い。テレビだって付いている。
那覇から鹿児島まで26時間かかる。ゆっくりした時間を過ごす為に気になっていた小説を持って来ていた。 しかし、この時期は波が荒れるらしい。文字を読んでいたら船酔いしてしまうかも知れない。 自分の体調を気にしながら過ごすことにしよう。
午後12時過ぎに
船内の灯りが消えるわけでは無いので自由に動くことができるが、仕事で使っている人が多い為か人の気配が少なくなる。
明日の朝9時に鹿児島港に到着なので、適当な時間にシャワールームへ行く。
脱衣カゴへ着替えを入れてシャワー室に入る。シャワーの音がし始めると航平の着替えが入った脱衣カゴを漁る者が現れた。
次の瞬間シャワー室の扉が開く!中には服を着た航平と壁に向かってお湯を吐くシャワーがあった。不審者はいかにも普通の真面目そうな若者だった。
「やあ。 何かお探しですか?」 航平が淡々とした様子で質問する。
不審者は素早く逃げ出そうとしたが、航平はそれ以上に素早く手刀を不審者の首に巻き付けて喉を指で掴む。膝関節の裏側に蹴りを入れて
「探し物はこれですか?」 航平の胸元に紐を通した
不審者は勾玉に興味津々のようだ。しかし何も情報は話すつもりはない様子なので、空いた手の親指で目潰しをする。
「うあああ!!」不審者は両手で航平の腕を掴み、目潰しから逃れようとする。
不審者のガードが空いた瞬間、喉を掴んでいた腕で
急いで部屋に戻ると航平の部屋にピッキングを試みている不審者と、その見張りに遭遇する。シャワー室の男が航平の動向を知らせる役だったのだろう。二人は驚いて逃げ出していく。
「はあ……。この歳で追いかけっこですか」 航平は着替えを自室の前に捨てる。
不審者二人は甲板まで逃げていった。小さな灯りはあるが外は暗く、月明かりのおかげで逃亡する二人が視認できる。息を弾ませながら階段を駆け上がる。
不審者たちは迎撃の構えのようだ。
見張り役が踏み込んで左フックを放つ。
航平は軸をずらしながら、外受けでガードして、防御の手でそのまま相手の左腕を抑える。
へばり付くような手に抑えられてしまい、動きが一瞬止まったその胸に肘打ちを打ち込む! ズドン!! 踏み込む足音がすごい。
男は後ろへ吹き飛ばされる。
二人目が追撃に来るが、一人目が吹き飛ばされるのを見て慎重になる。
男は蹴りを放とうとするが、航平はその脚を蹴って相手の動きを止める。
間合いが近くなって男は慌ててパンチを放つが、航平はそれを防御する。その手で流れるように裏拳を返す。
鼻っ柱に裏拳をもらって、怯む男のその脇に腕を差し込む。
密着した間合いになってしまい、男は頭突きに来る。航平は足を引き、半身になって頭突きを躱しながらその腕を捻り上げていく。
全ての間合いで相手を圧倒した航平だったが、男は前方回転受身をとって
「おおっ!?」
航平の予想外の方法で関節技から逃れたのもあるが、さらに驚いたのは二人の男はそのまま柵を越えて海へと身を投げた。
「じ、自殺ですか? うーん、そんなに情報を渡したくないものですかね?」
航平の手にはシャワー室の男が隠し持っていた
「ふむ、そういえば忍者は服を着たまま泳げたらしいですね?」
少し前に出港したはずだが、ここから奄美大島まで泳げるものなのだろうか?
男を放り込んでおいたシャワー室に戻ると、不審者はいなくなっていた。
「はあ……。 さて、シャワーを浴びて寝ましょう。」
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