第12章

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 もう9月になっていたのだけど、あの時、実家から帰る途中、歩いている時こそ腕を組んでいたのだが、電車の中では、今まではななのは僕の肩に寄りかかるようにしていたのだが、そんな風でもなかった。それに、毎朝、僕が寝ているとベッドの上に飛び乗って覆いかぶさるようにしていたのだが、そんなこともしてこなくなっていた。


 それどころか、何となくぎこちなかったのだ。僕がテーブルで勉強しているとこの教科書をのぞいても、ななのはなんとなく身構えているようなのだ。そして、学校が始まって忙しいのか、しばらく顔を出さなかったのだが、土曜日の朝、僕が出る前に弁当を届けに来て


「シュウ バイトの許可が降りてん そやから・・日曜から水曜まで牛丼屋にいくことになってん 土曜はお肉屋さんに来てって言われてるし 木曜はお母さんもバイト休みやから、一緒に居るし・・金曜はお勉強に充てる ほんでな 土曜のこの時間しか会われへんようになった でも、土曜はお弁当は届けるしな」


「そうか 大変だね 土曜も無理すんなよ 弁当は自分で作るよ」


「うーん そんなんしたら、ずーと シュウと会われへんやんかぁー 週1回やでー 他の女の人によろめかんとってな」と、言ったと思ったら、背伸びをして僕のホッペにチュッとして


「うふっ おまじない」と、言い放って走るように帰っていったのだ。


 それから、ななのの顔を見ない生活が続いていた。僕は、物足りないような毎日を感じていた。せっかく、意を決して、彼女になってくれと告白したのに、途端にコレかよーと・・。もっと、チュッチュッと甘えたようにしてくることを考えていたのだが、週に一度の15分ほどのデートなのかと。それでも、僕はななのへの欲望を抑えることに悩むより、これで良かったのかと思うようにしていたのだ。


 そんな調子で1ト月程経った時、僕は、我慢出来なくなって、牛丼を食べに行ってみた。可愛らしい声で応対している元気な ななのの姿があった。


 だけど、僕に応対する時も、何気ない顔で他の人と変わらない応対だった。何となく、ななのが遠くに行ってしまったような感覚で店を出てきていたのだ。

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