転生テイマー
ボウガ
ブソウの戦い。
ピッツは、また大きく息をすいこみ、もう一度雄たけびをあげる。今度はブソウに命中すると、ブソウを一歩、また一歩、とのけぞらせ、最後には数十歩分ふきとばしてしまった。
「くっ」
ブソウはその攻撃にたえるように、呪文を唱える。
「岩のように!リトス!」
すると、ブソウの体は屈強な岩のように地面にくいこみ、吹き飛ばされるのをふせいだ。次にその魔法を右手をふって解いたと思えば、宙高く飛び上がり、ピッツの眼前、すぐ間近まで接近する。
「しめた……」
と背中から双剣をとりだすと、勢いよく斬撃を放った。その斬撃はマナで固められているのか、斬撃がそのまま宙を割き、光る刃となって直進していくのだった。
「!?」
しかし、斬撃がピッツの体に直撃したかに見えた瞬間、ピッツは声もなく不自然に引き裂かれた。
「ばかな!!」
ブソウが目を凝らす。するとそこにピッツの姿はなく、ただピッツの纏う影だけが身代わりとしてあり、それが斬撃をうけ、引き裂かれただけのようだった。
「クゥゥ」
まさか、と思い振り返る。ブソウは、自分の背後にあの巨体とは思えない俊敏さでまわりこみ、大きく息を吸い込んで吐き出す準備をしているピッツの姿を確認した。
「魔獣……め!!」
憎々しい瞳でピッツを見つめる。
「アウウン……」
ピッツは静かに息をすいこみ、まるで木の葉でも吹き飛ばすように勢いよく息をはいた。
「うう、うぐうう!!うあああ!!」
ブソウは呪文を放とうとしたが遅かった。勢いよくとばされ、森の中の一本の木にたたきつけられる。
「ブソウ!!」
ラヅは近寄ろうとするが、その肩をドラーヌががっしりととめた。
「まだだ、あいつは大丈夫、手練れの冒険者だ……」
だが、ピッツがのしのしと吹き飛ばされた彼に近づいていこうとも、彼はピクリともしなかった。ピッツは彼に近づき、鼻をならした。
「本当に大丈夫なの?」
ラヅはドラーヌに尋ねるが今度はドラーヌは返事をしなかった。ピッツはつめをたて、もちあげて獲物にめがけて狙いを定める。
「ピッ……」
大声でラヅが叫ぼうとしたその瞬間、小さな炎の弾が、ピッツの頬にあたった。
「こっちです、魔獣ピッツよ……」
ピッツの真横、そこに佇んでいたのはラーミだった。
「クゥウン」
不思議そうにラーミを見つめるピッツ、その姿はまるで小さな時と同じようで、ラヅはいまだにピッツが自我を失っていることを信じられなかった。
「ラ、ラーミさん……」
それにもまして、ラーミの事が心配だった。ラーミは続ける
「私たちは謝らなければいけない」
転生テイマー ボウガ @yumieimaru
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