34話 台風が直撃しなくとも雨は怖い
夜。
携帯で雨雲レーダーを見ると、Mたちのいる場所は真っ赤に染まっていた。
高速道路を走る車の中である。
「もう少しで大雨地帯、抜けるから」
Mは運転中の夫に話しかけた。
今日のうちに(0時を回らないうちに)家に帰りたいところだが、雨雲が去るのを待とうと、途中のSAに入ることにした。
その進入路で、ざぶんと溜まった水に突っ込んだ。ひやっとする。
そこで、20分くらい駐車していたか。雨雲レーダーを見て雨が弱まったと判断する。同じように思う人はいて、先を1台、発進して行った。
「あの車のあと、ついて行って」
進入路で水たまりにはまったことが頭をかすめた。
高速へ合流する道路へ入ると、なんだか前の車の進みがのろくなった。バックランプを、ちかちか点滅までさせる。
ん。右手に車。
停まってる。
闇の中で、ライトセーバーみたいなものを振ってる黒い人影がいる。
何、なに、事故?
ばっしゃん。
Mたちの乗った車は水たまりに突入した。
夫は黙って、ゆっくりと走行していく。
通り過ぎる右の車窓に、ひとり、ふたり、人影と、バイクが水の中に横倒しになっているのが見えた。
うわー、ぶつかった? ひっくり返った?
左手の車窓にも車が見えた。そこには1台、2台、3台……、車が停まっている。
えっ。あなたたちも、ぶつかった? それとも水で動けないの?
右も左も、その状態で、Mと夫の車は
過去に海べりの道、雷雨の中を走ったときも「神さま、無事、家に帰してください」とお願いしたが、このときも、ちょっとの差で停まっている車はMたちの車だったかもしれないと、「神さま」と祈ってしまった。
※M家は身内のフォローで、やたら長距離走行が多い。
ロードムービー人生。
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