頑張れレイ先生(閉じられた自由の中で番外編)

汐なぎ(うしおなぎ)

おんぶ編(一)

「先生、やめて」

 俺は拷問の授業で、まだ九歳の少年を犯していた。

 いつものように乱暴に痛めつけるのではなく、この日はひたすらいかせまくっていた。

「もう、無理」

「クリスもう降参か? まだ始まったばかりだぞ」

 普段は泣き言を言わないクリスが、珍しく懇願して来る。

 それが堪らなくそそった。

 しかし、これは俺が相手だから助けを求めるんであって、他の奴に同じ事をされたんだったら、絶対に助けを求めねえ。

 それどころか、クリスは声すら出さねえだろう。

 なぜかと言うと、クリスは筋金入りの負けず嫌いだからだ。

 だが、今回のは、本当に無理なんじゃなくて、面倒だからやめさせようとしてるだけに違いねえ。

「早くやめて欲しいなら、お願いしてみろよ」

「お願いだから、早くやって終わっちゃってよ」

 まるでお腹がすいたから早くご飯をよこせというような口調で言って来やがる。

「色気出して言ったら早く終わってやるよ」

「先生。ねえ、お願い」

 さっきとは打って変わって、吐息まじりに誘うように言う。

 演技と分かっていても、俺の理性が崩壊しそうだ。

「じゃあ、いくぞ」

 そう言うと、俺はクリスの感じるところを攻めまくった。

 もう一年以上やってれば、どこがいいかなんて熟知している。

 そして、散々いたぶってから、最後までいくとクリスを解放した。

 クリスはいかされまくって、体全体が揺れる程に息をしていた。

「先生、結局やめないんじゃない。やりすぎ。きっと、もう立てない」

 クリスが苦情を言ってくるが、これは授業なんだから、文句を言われる筋合いはねえ。

 まあ、それでも、俺もやりすぎた自覚はあるから悪いとは思ってる。

「立てないなら俺が部屋までおぶってってやるよ」

「恥ずかしいから嫌だ。付き添いの人に支えて貰って帰る」

 クリスはそう言うと、気力を振り絞って立ち上がった。

 しかし、どんなに強情を張っても足が震えて、立っているのがやっとなのはバレバレだ。

「おんぶが嫌ならお姫様抱っこだな。どっちがいい?」

 クリスは俺の方を向くと、きつい目で睨んで来やがった。


 クリスの容貌はまだ幼いながら、ため息が出るくらいのべっぴんだ。

 一年近く見ていても、まだ慣れねえ。

 俺はクリスにきつい目で睨まれて、ゾクゾクする。

「おんぶで」

 その口調は怒気をはらんでいた。

「じゃあ背中に乗れ」

 俺は屈んでクリスを背負った。

 まだ軽くて柔らかい感触。

 耳にかかる息。

 さっきいきまくったのに、俺の股間がまた膨らんで来やがる。

 それに気付いたクリスが、思い切り横腹を蹴って来やがった。


 この授業は社員教育の一環で受け持ってる。

 ここは『代理業社』という会社で、表向きは合法企業という事になっちゃあいるが、裏ではかなり際どい事をしている。

 会社の経営戦略のアドバイスから、要人の暗殺まで、なんでもござれだ。

 だから、例え失敗して捕まったとしても、情報を吐かないようにこういう授業も受けさせられる。


 クリスがここに来たのは八歳の時だ。

 どっかのバカが、島を爆破するという極秘任務中にクリスに目撃されたらしい。

 そして、殺すのが忍びねえというバカげた理由で、クリスはここに連れて来られたそうだ。

 八歳の子供をここに連れて来て、優しく保護してくれるとでも思ったんだろうか?

 使い道なんざ、せいぜいこの容貌を武器に、色じかけさせるくらいが関の山だ。

 クリスは頭が良かったから、社内で働く事になりそうだったが、それは結果論に過ぎねえ。

 子供に酷な授業を受けさせ、つらい思いをさせるくらいならいっそその場で殺した方が、いくらか親切ってもんだ。


「ここです」

 付き人が部屋の前で立ち止まった。

 クリスは俺の背中で落ちているようだった。

「部屋に入るぜ」

 俺はそう言って、クリスを背負ったまま部屋に入った。

 扉が閉められ、外から鍵をかける音がした。

 俺はベッドの上にクリスを下ろす。

「クリス起きろ」

 俺が軽くほっぺたを叩くと、クリスは目を開けてぼんやりしている。

 クリスは少なくとも俺の前ではこんな無防備な姿を見せた事はなかった。

「起きねえとキスするぞ」

 俺は返事を待たずにクリスに口付けた。

 寝ぼけているくせに、俺が舌を入れたら絡めて来る。

 しかし、さすがにそれで目が覚めたらしい。

「先生?」

 クリスはそう言ってから、辺りを見回す。

 そこで、やっとここが自分の部屋だと気付いたみてえだ。

「お前しばらく落ちてたぞ」

「まさか、おんぶされてここまで来たの?」

 クリスが殺意のこもった目で俺を睨みつける。

 殺意というのは、例えではなく文字通り本物の殺意だ。

 そして、それも代理業社の社内教育で身につけたもんだ。

 恐らく、一般人なら睨まれただけで動けなくなる奴もいるかもしれねえ。

「それより、ここはなんもねえところだな」

 俺は辺りを見回す。

 ベッド、サイドテーブル、ロッカー、シャワー、トイレ。

 それが最小限のスペースに収まっている。

「全部あるけど?」

 クリスはそう言って首を傾げた。

「で、鍵はどうなってるんだ? ここに入る時は外からかけられたみてえだけど」

「ああ。外からしか開かないよ」

 クリスは何事もねえようにそう言った。

「おいおい。ここは監獄か? 良くこんなところにいられるな」

「どうして? ここは安全で過ごしやすいよ」

 これじゃあまるで監禁だ。

 俺は言葉を失った。


「先生、水が飲みたい」

 クリスはサイドテーブルにあるポットを指さした。

「俺の部屋にでもウォーターサーバーくらいあるぞ。水がなくなったらどうするんだよ」

「連絡したら持って来てくれる。それより水」

 どうやら、水を汲むのもつらいらしい。

 俺はコップに入れた水を口に含んだ。

「僕が飲みたいん……」

 言いかけた言葉を口で塞いで、水を流し込んでやった。

 クリスは喉を鳴らして飲み込んだ。

 俺はそのまま舌を絡めて、激しく口付ける。

 クリスは戸惑いながらもそれに応える。

 そして、俺の首に腕を回した。


 そうやって激しく口付けていると、扉の開く音が聞こえた。

 後ろで人の気配がする。

 いつまで経っても出て来ない俺に業を煮やして、警備員でも入って来たんだろう。

 俺はクリスが口を離そうとするのを、後頭部を押さえて逃げられねえようにした。

『人が見てる』

 クリスが背中を叩いて合図をする。

『見せつけてやれ』

 俺は舌を絡めて返事をした。


「なにをしている!」

 警備員が大きな声を出した。

 俺はそれを無視し、そのままクリスを押し倒した。

 クリスは懸命に抵抗していたが、子供の力で俺に適う訳がねえ。

「いい加減にしないか」

 後ろで銃を抜く気配がした。

 俺はポットを警備員に投げつけた。

「なにをする!」

「そこで見とけよ。あんただって、クリスの裸が見てえんだろ?」

 警備員が躊躇する。

 どうやら本気でクリスの裸が見たいらしい。

「離して!」

 クリスは口を解放されると、抗議の声をあげた。

「警備員のあそこが立ってるぜ」

 俺はクリスの耳元で囁き、右手をTシャツの裾から差し入れた。

 クリスの素肌を見て息を飲む気配が伝わる。

「見せつけてやれよ」

 ズボンを脱がそうとしたところで、クリスが股間を蹴飛ばして来やがった。

 俺は痛みで、やっと正気を取り戻した。

 どうやら、クリスと激しく口付けていたあたりで理性が飛んでいたみてえだ。

「冗談だよ」

 俺はそう言って起き上がった。

「楽しめたか? だがな、このまま襲おうとは思うなよ」

 俺は去り際に警備員を睨みつけた。

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