災い転じて台地成す
つとむュー
第1話 カナメイシ
眠りのさらに奥深き場所から、ゴゴゴゴと不気味な地鳴りがやって来る。
刹那、世界を突き上げるような衝撃がベッドを宙に舞い上げ、俺は眼を開けた。
バサバサと棚から降り注ぐ本の群れ。それらを避けようとして、俺はベッドから床に転げ落ちる。
「イテテテ……」
腰の痛みなんてどうでもいい。
せめて頭だけは守らなくてはと手で頭を抑え、身を丸めたところで――俺は眠りから覚めた。
周りを見渡すと床には何も落ちてないし、地球も全く揺れてない。
「なんだ、夢か……」
身を起こすと、本もちゃんと寝る前の位置に収まっている。
何でこんな夢を見たんだろうと昨日までの人生を振り返ると、一つだけ心当たりがあった。
「あの映画か……」
なんか最近、地震が起きる映画を観たような気がする。
なんでも日本書紀によると、全国各地の神社には災いを鎮めるための石が設置されているらしい。
その石を粗末にすると災いを呼び起こしてしまう――と、映画にすっかり感化された心が叫んでいた。
「何て言ったっけ、あの石の名前」
確か、カナなんとかだったような……。
その時、俺の脳裏に蘇ったのは、自宅の裏山にある神社の風景。
子供の頃、毎日のように遊んでいた神社だ。境内には、重そうな石があったような気がする。
「そうだ、カナメイシだ!」
石の名前を思い出した俺は、居ても立っても居られなくなる。
――先ほどの地震の夢。
もしかしたら予知夢だったんじゃないだろうか。ということは、裏の神社のカナメイシに異変が起きた可能性がある。もしそうなら大変なこと。
「石を元に戻さなくちゃ!」
謎の使命感に駆られた俺は、慌てて着替えると家の外に飛び出した。
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