秒で終わる昔話~桃太郎編~

鼻唄工房

はじまりはじまり~住所は非公開で~

 昔々、あるところに、もっと言えば埼玉県飯能市上長沢3丁──


「おい!」


 お婆さんが声を荒げます。


「住所言うな! それ以上言ったら特定されるやろ!」

「ああ、すいません……でも、台本に書いてあるんですよ」


 ナレーションの男は、台本を指さし、お婆さんに見せました。


「脚本書いた奴だれじゃ! 人の住所公開するとか、非常識過ぎるわ!」


 お婆さんは怒っています。


「そのまま住所公開するっていうんやったら、めちゃくちゃやったる! 台本も変なのに書き直したるからな!」

「そんな! 台本通りにやってもらわないと困りますよ!」

「うるさいわボケ! もう怒った! 何が『日本昔ばなし』の撮影や! めちゃくちゃにしたるで!」


 こうして、秒で終わる昔話は幕を開けることになるのでした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る