第2話 花

 両親を、車の後ろに乗せて運転していた。


 父が言った。


「その先の、バラの看板の見える信号の前を、右折や」


「……バラの看板て、どこ?」


 と、私。


「あの、でかいバラの看板が見えへんのか?」


 と、父。


「ええっ……でかいバラの看板? どれやろ」


「おまえ、目ぇ悪ぅなっとるんちゃうか?


 あんなでかい看板が、見えへんとは」


 後ろから母が、私の肩をつついて、言った。


「バラちゃう、あれは、ひまわり、やしな」


 目の前には、保険会社のひまわりの看板がデカデカと……


 右折は、間に合わなかった。


 私の父は、クセモノ! である。

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