崖の上の決壊者 × Rоllⅰng Days

野々村のら

 麗らかな春の昼下がり。優しい陽射しが図書館の本たちを浮かび上がらせている中、少女が一人、窓辺に座って本を捲っていた。真っ直ぐに伸びた黒髪、整った顔立ち。陽炎となって、ゆらりとこの空間から消えていきそうな、儚げな雰囲気を持ち合わせている。

 その時、紙の擦れる音が止まった。少女が頁を捲る手を止めたのだ。彼女は視線を上げると、考えるように視線を漂わせる。

「重なった。いや、狂った……」

 その後、彼女はまた何かを呟いた。数秒後、その空間に人影が現れる。人影は彼女と幾つか言葉を交わした後、また消えていった。

 彼女は、もう一度書物に目を移す。またその空間に、静寂が戻った。春の陽射しだけが、変わらずに彼女を優しく照らし出している。


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