ENDの物語

野々村のら

000

 薄暗い裏路地を、彼は歩いていた。

 まだ若い男である。しかし、その目は闇よりも暗い。歩き方がぎこちないと思えば、彼の右足は義足のようだった。

 時折通り過ぎる人や猫に目もくれず、ゆっくりと何かに向かって歩いている。しかし彼は何を思ったのか、いきなり足を止めた。かぼそい猫の鳴き声がする。彼は上を見上げて、眩しそうに目を細めた。

 薄暗いこちらの景色とは対照的な高層ビルが、眩しいほどの輝きを放って立ち並んでいた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る