第8話 チュートリアル完了!
「ゼロ~っ!」
という、キャラクターの声と同時に俺の首輪から電池が外された。
そして、彼女は一気に緊張が途切れたのか、首輪の電池を握りしめたまま、どっ、と後ろに倒れ込み、
「や、やったぁ~!」
と安堵した表情で声を漏らす。
だが……
「まだだっ……!」
「え?」
俺のセリフに、彼女はキョトンとしている。
「どういうこと?電池は外れたし、これでいいんじゃないの?」
「いや。問題はここからだ。俺たちは首輪の電池を抜くことができた。だが、これで完全に首輪が停止した、という確証はない。」
「そ、そうだったわ。確かに。」
俺と彼女は、モニターの方に向き、キャラクターを見つめた。
このまま首輪は爆発しないのか、爆発するのか、それとも別の何かが起きるのか……?さあ、どうなる……?
「ブッブーーッ!残念!2人とも未解答!なので、2人で仲良く死亡決定っ!というわけで、首輪が爆発しま~す!」
来たっ!一体どうなるんだ!?
アキバは額から冷や汗を垂らし、汗で手を湿らしながら、じっとモニターを見つめる。
「じゃ、首輪爆発まで、5、4、3、2、1………」
頼む!爆発しないでくれ……!
お願い!爆発しないで!
アキバと彼女は、目を瞑って祈った。そして……
「ドーン!」
………。………………。
………アキバはそっと目を開けた。汗で滲んだ両手で首を触り、胴体と頭がしっかりとつながっていることを確認する。
彼女もまた、目を開け、自分の体をペタペタと触って、体の安否を確認している。
………俺も彼女も、一向に、爆発する気配はない。ということは、つまり………っ!
俺と彼女は目を見合わせ、
「「やったーーーーーーーーーーーーーっ!!!」」
と大声で叫んだ。
「やった!勝った!賭けに、賭けに勝ったんだ!俺たちは!」
「ええ、そうよ!勝った!生き残ったのよ、私たち!」
勝利の雄叫びを上げながら、俺と彼女は手を取り合い、うさぎみたくぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「いや~、せめて何かしらを押しておけばよかったのにねぇ~。まさか未解答のままにしちゃうとは。あ、ってかもう2人とも聞こえてないか~。アハハッ!」
キャラクターが何か喋っている。まあ、と言っても今の俺たちには負け犬の遠吠えのようにしか聞こえない。
「いや~。楽しかったね~。これだからデスゲームは面白いっっ!それじゃ、今回はこれでおしまい!またね~。」
とキャラクターが言い終わると同時に、彼女はモニターを、ガン!、と思いっきり殴った。
「っへん!何を偉そうに!こっちはちゃっかり2人とも生き残ってるっつーの!イラつくんだよ、その顔!」
感情が抑えきれないほど嬉しいようで、ガン、ガンと、手を振っているキャラクターの顔を、彼女はぶん殴りながらキャラクターを煽っている。
そんな彼女を遠目に見ていると、
「デスゲームは以上となります。お楽しみいただけたでしょうか?ご視聴いただき、誠にありがとうございました。なお、管理員は死体の除去、清掃、及び点検を行ってください。」
というシステムのアナウンスが流れた。
「これ、誰宛に行ってるんだ?」
と、俺がつぶやくと、彼女はモニターを殴る手を止めて説明してくれた。
「ああ、これはこのデスゲームを見ていた視聴者に対してのアナウンスよ。」
視聴者だと!?
「え?じゃあもしかしてこのデスゲーム、誰かに見られてたのか?だとしたらまずいんじゃ……。」
俺がアワアワとしていると、彼女は手を左右に振り、
「いや、大丈夫よ。今回のやつは予定外のゲームだし。視聴者はいないでしょ。もっとも今はこのデスゲーム島の、どのデスゲームも見れないと思うけどね……。」
と、答えた。
「え?それって……?」
「アンタも見たでしょ?さっきまでいた、ホールの集団を。」
「ホールの集団って……まさかここに逃げてくる前に暴れてたアイツらのことか!?でも、もうかれこれ1時間は経ってるだろ。流石にあの暴動はもう鎮圧されてるでしょ。」
と、俺が言うと、
「いや、多分逆よ。」
と、彼女がトーンを落として言った。
「逆って?」
「それをこれから説明するわ。どこか、ちょうどいい場所ないかしら……。」
彼女は手を顎につけて考え始める。そして、そのすぐ後に、
「なお、これよりこの部屋にある、入り口、休憩室のドアのロックを解除します。管理員は休憩室の点検も行ってください。」
と言うアナウンスが流れた。
それを聞き、
「ああ、そういえば休憩室があったわね。」
と彼女が呟いた。
「え?休憩室?何それ?」
俺が全くわからない、と言うトーンで尋ねると、彼女はこう答えた。
「このデスゲームで勝者が出た時に使われる部屋よ。デスゲームは心身共にかなり疲労するから、勝者は休憩するために部屋が与えられて、そこで休むことができるのよ。」
「なんでそんな親切なんだ?」
「いや、運営が親切ってわけじゃないわ。ただ、デスゲームの参加者がみんなヘトヘトだと、あんまりゲームが面白くならないでしょ?だから、あえて休ませて、次のデスゲームのために力を蓄えさせるのよ。まあ、たまに休憩室で初めての人殺しにショックを受けて落ち込んでる人の様子を見る、みたいな余興もあったりするらしいけど。」
「へぇ、そう言うわけがあるのか。にしても相変わらずおっかないな。」
「まあ、デスゲームなんてそんなもんよ。それより、そこの休憩室で休みましょう。」
「バレないのか?」
「ま、その時はその時よ。」
と言うと、彼女は部屋の奥へと歩いていく。そして、右の角に行くと足を止め、そこから1歩足を踏み出した。ウィーン、と言う音と共に壁が開く。
というか、そこにドアがあったのか。デスゲーム中は全く気づかなかった……。
俺が驚いて呆然としていると、彼女が俺の方を向き、
「早く来なさい。」
と呼びかけて催促した。
「あ、ああ。」
俺は彼女に言われるままに休憩室へと足を運んだ。
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