第30話 想い

 その後、ルナとヴィヴィがお風呂から出てきて今度はシェスカがお風呂へ入っていった。


「ん? シェスカ何かあった?」


「こら、あんまり気にするんじゃないわよ」


 ヴィヴィが気になったのか質問してきた。俺はなんて答えればいいかわからなかったが、ルナが聞かないようにいってくれた。


「ん、わかった。ルナ、髪乾かして」


「わかったわよ、そこに座りなさい」


 ルナがソファに座り、ヴィヴィがカーペットに座って頭をルナに預ける。さっきシェスカからされた質問から俺は二人を観察する。二人を見つめているとこちらの視線に気づいたルナがこちらを見てきた。耳がぴょこぴょこ動き、尻尾はパタパタとソファ上で少し跳ねる。


「ちょっと、何見てるのよ。何かついてる?」


「いや、耳と目と鼻がついてるな」


「当たり前じゃない。何言ってのんよ」


「ごめん、なんでもないんだ気にしないでくれ」


「そう、ならいいわ」


 ほんとに、NPCなのか? 他のプレイヤーだったりするんじゃないか? いや、それはあり得ないか。


「ねむーい」


 ヴィヴィがルナに髪を乾かしてもらい、眠そうな目をしてそのままベッドへダイブした。すぐに寝息を立て始める。


 ルナも自分のベッドへ移動する。


「ねえ、シェスカに何か聞かれたんでしょ?」


「シェスカのことをどう思ってるかを聞かれたよ」


「なんて答えたの?」


「何も、答えられなかった。好きだ、そうとも言われた」


「そう、まあそんなことだろうと思ったわ」


 俺はルナにそう言われてまた言葉に詰まる。


「この際だから、私も言わせてもらうわね。私もルフレのことが好きよ。これはパーティメンバーとしてじゃなくて恋愛的な意味で。シェスカもそう。ヴィヴィは、わからないけどルフレのことが好きなのは間違いないと思うわ」


 ルナが、自身の想いを俺に向けて話し始める。


「私は、エンシェント・エイプに追い詰められて絶体絶命の時に助けられた。あれで惚れるなっていう方が無理だわ。あの時から私にはルフレが輝いて見えた。ほんとに嬉しかったの。それから二人で依頼をこなして、もっと輝いて見えるようになった。どんどん自分も強くなれて、実力に関してもほんとに感謝してる。出会えてよかった。」


 出会ってすぐのことを俺は思い出す。ルナはエンシェント・エイプに追われボロボロの状態だった。


「それに家族のところから離れてずっと一人で過ごしてきたけど、ルフレとシェスカとヴィヴィと生活できて忘れかけてた親しい人の温かさも思い出せたの。私もシェスカと一緒ですぐに答えはいらない。ゆっくり考えて答えを出して」


「そう……か。ありがとう。すぐに答えられなくてすまない」


「だからいいって言ってるじゃない。私もシェスカもいつまでも待ってるわよ。今はただ私たちの気持ちを伝えただけ」


「上がったよー!」


 シェスカがお風呂から上がったようだ。


「さ、早くルフレも入ってきなさい」


「わかった」


「お風呂すごく気持ちいいよ!」


「楽しみだ」


 俺はシェスカにそう声をかけてお風呂へ入った。お風呂の中でも悶々と答えが見つからず悩んでいた。


 お風呂から上がると、旅の疲れもあったのだろうみんな寝ていた。けど俺もすぐに眠気に襲われたのでベッドへと入る。



「────フレ、あなたは大きな転換点に立っています。どうか、折れないでください」



 また、頭の中に声が聞こえる。このゲームに入った時からずっと、話しかけてきているこの声。君は誰なんだ。ここはなんなんだ。何か知っているなら、教えてくれ──────




 ──────しかし、何も返事は返ってこない。いつもと同じだ、こちらから何か尋ねようとしても、何も聞こえなくなる。俺は、諦めてそのまま眠りについた。

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