何でもできる異世界に入れたので、チート使って自由に生きる(旧:無限の可能性がある異世界をチートで自由に生きていく! 〜これってほんとにゲームだよね!?〜)
空月九重
第一章 初めての異世界
プロローグ
俺は、絶望の淵に立っていた。何をするでもなく、ただひたすらに起こったことを受け入れられず部屋の中に1人でいる。そのことに対して自分が涙はとうに枯れ果て、頬には涙が乾いた後だけが残っている。
もっと上手くできなかったのか、もっと早く行動できなかったか、自分の気持ちにもっと早く気付けていたら。そんな考えが、永遠に頭の中を巡っている。しかし、起こったことは覆せない。それもわかっている。わかった上でそれを上回るほどの、後悔が心を埋め尽くしていた。
(ぐぅーーーー)
ここ数日の間、水しか飲んでいなかった。どんなに絶望して、すべてのことに対してやる気がなかったとしても、生きている。生きている限り、飢餓感はどうしても襲ってくる。その飢餓感に抗うことはもうできず、俺は部屋の冷蔵庫を開ける。しかし、中にあるのはマヨネーズと、無くなりかけたケチャップ、あとは水くらいしかなかった。食べるものは何もない。俺は仕方がなく外へ出た。
数日動いていなかったため、足元がおぼつかない。髪の毛もボサボサで、服はよれている。酷い見た目なのだろう。すれ違う人がギョッとして自分から離れていく。俺の周りに寄り添ってくれていた人はもう誰もいない。そのことがより一層俺を絶望へと叩き落としてきた。
しばらく、歩いて、横断歩道へとやってきた。赤信号だったので、立ち止まる。俯くことしかできず、自分の足元だけを見る。
「靴、履いてねぇや」
靴を履いて出てくることすらも忘れたようだった。帰宅時間で人が多いにも関わらず、相変わらず俺の周りには少し空間ができている。
「──レ」
そう名前を呼ばれた気がした。ついに幻聴が聞こえ始めたらしかった。俺は笑うことしかできなかった。その名前で俺を呼ぶ奴はもう誰もいない。
「──フレ」
そう、誰もいないはずだった。
「ルフレ」
やめてくれ。その名前で俺を呼ばないでくれ。
「ルフレ」
その世界での俺はもう終わったんだよ! 呼ばないでくれ!
「ルフレ…………もう一度やり直したいですか?」
その言葉を聞いて、俺は首が取れるかと思うほどの勢いで頭を上げる。やり直せるものならやり直したい。その一心で声の主を探す。しかし、やはり俺の周りには隙間がある。前には雨に濡れた横断歩道があるだけ。そもそも世界が違う。その名前で俺のことを呼ぶ人がいるわけがない。
信号が青に変わり、俺は後ろの人に押され横断歩道へと足を踏み出した。ちょうど真ん中を過ぎる手前、見たことのある人とすれ違った気がした。俺は振り返り、その人を探す。その時、横断歩道で立ち止まっているのは自分だけだった。それに誰かが立っていたところでその人であるはずがない。極限状態すぎる。ついに幻覚まで見え始めたのか。
俺は前は歩こうと前を振り向いたが、そこに飛び込んできたのはトラックのヘッドライトだった。
いつのまにか信号が変わっていたらしい。
世界がスローモーションになる。
「きゃーーーーーー!」「おい! 人が轢かれたぞ!」
「誰か! 救急車だ!」
「やばい! 轢いちまった!」
「君! 大丈夫かい!?」
俺の周りで、たくさんの人が話し始めた。次々に集まってきた人たちがスマホを手に取り俺にカメラを向け始める。あっという間にそこは人で溢れかえり始めた。
そうか、轢かれたのか。しばらくしてやっと理解が追いついてきた。体から力が抜けていく。赤い命が器から溢れ出る。もう止めることはできない。すべて、起こってしまったのだから。もう、取り返しがつかない。
そう取り返しはつかないのだ。
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