第5話 剣術

 俺は、昼下がりの真上から照らす太陽の光を反射し輝く、腰まで伸びた黄金の髪をハーフアップでまとめた女性の後ろについて歩いている。


「シェスカ、どこに食べにいくんだ?」


「ここから歩いてすぐのところに、私が昔から通ってるカフェがあるの! そこでお昼にしましょう」


「カフェか、いいね。シェスカはいつ王都に来たんだ?」


「急な質問だね! 私はねー、17になってすぐの時に王都に出てきたんだ。騎士団の入団試験を受けた時だね! もう6年前か、懐かしいなー」


「たったの6年で近衛騎士の団長になったのか!? シェスカ、ものすごく強いんだな」


「どうなんだろ、とにかく頑張らなきゃ! と思ってたらいつの間にか近衛騎士団長になってたのよね」


「いつの間にかって……」


「あ! あそこ! ついたよ!」


 驚いたのも束の間、すぐに俺たちはカフェに着いた。そのカフェは、街の大通りから少し外れた狭い路地にあった。レトロな雰囲気のおしゃれなカフェである。大きな看板はなくドアの上からマグカップのイラストが描かれた小さな看板があるだけである。


カランカラン


「マスター、こんにちは」


「シェスカか。いらっしゃい」


 マスターは、老齢で180cm近く身長があるだろう長身のエレガントという言葉がよく似合う男性だった。


「そちらの方も、いらっしゃいませ。私は、ヴィルネアスというものです。以後お見知り置きを。シェスカのご友人ですかな?」


「ルフレという、シェスカとはレームネスで知り合った」


「ルフレが持ってる剣について話を聞きたくて! 連れてきちゃったの」


「そうでしたか、ゆっくりして行ってください」


「ルフレ! 座ろう!」


「ああ」


 俺たちは窓際のテーブル席に腰を下ろした。


「マスター、私はいつもの! ルフレはどうする?」


「じゃあ俺もシェスカと同じものを」


「かしこまりました」


「ルフレルフレ! その剣どこで見つけたの?」


「これは、レームネスの格安の剣が大量に入ってる樽があるだろ? そこで黒くくすんでたのを見つけたんだ」


「そんなことってある!? 店長が気づかないなんて、それを見つけるなんてルフレはすごいんだね!」


「そういうのは得意なんだよ」


「Sランク武器なんだよね?」


「そうだな」


「見せてもらってもいい?」


「ああ」


 俺は、シェスカに剣を手渡す。シェスカはしばらく剣を目をキラキラさせながら眺めていた。


『ーーーー離して』


「うわぁ!? なになに!?」


『ルフレのとこに帰して』


「しゃべった!?」


 シェスカは、ものすごく驚きながらすごい勢いで剣を俺の手に返した。


「お前喋れたのか? さっきまで感情を少し伝えてくるくらいだっただろう」


『ルフレの魔力のおかげ、あなたの魔力のおかげで喋れるくらいには力が回復した』


「ねぇねぇ。ルフレどういうことなの? 説明してよ!」


 シェスカが再び目をキラキラさせながら俺の方を見てきた。


「この剣、ソード・オブ・ユグドラシルはどうもインテリジェンスウエポンらしいんだ。レームネスにいた時はなんとなく感情がわかるくらいだったんだが、喋れるようになったらしい」


「へぇ、私インテリジェンスウエポンなんか初めて見たよ! 話には聞いていたけど。初めまして! 私シェスカっていうの。お名前は?」


『ん、よろしく。名前は……ルフレ、つけて?』


「何? 急だな」


 名前か、そうだな。


「ヴィヴィでどうだ?」


『ヴィヴィ、ヴィヴィ。ん、いい名前。私はヴィヴィ。ルフレ、ありがとう』


「気に入ってもらえたようで嬉しいよ」


「ヴィヴィちゃんか! ルフレいい名前つけるね! この子にぴったりだよ!」


 ひと段落したところで、俺たちのテーブルにマスターがコーヒーとサンドイッチを持ってきた。

 

「お待たせしました、先程の会話が聞こえてしまったのですが。そちらの剣インテリジェンスウエポンなのですね。どうか大切に使ってあげてください。いつか必ずあなたを助けてくれますよ」


「そうだな、大切にするよ。ただ、正直剣の技術があまりにもなさすぎて使いこなせるか心配なんだよな」


「それならば、そこにいる近衛騎士団長様に教えてもらうのが良いでしょう」


「いいのか?」


「そうだね! 珍しいものを見せてもらったし。いいよ! マスター地下の修練場使ってもいい?」


「もちろんです。どうぞお使いください」


 地下に修練場? なぜカフェにそんなのがあるんだ? と思ったが特に触れることができず、俺たちはその後、他愛無い会話をしながら食事をした。食べ終わったところで。


「じゃあルフレ、早速行こうか!」


 俺はまたシェスカに腕を引っ張られて連れていかれるのだった。


 俺たちは地下へと続く階段を降りている。しばらく降りて行くと、扉のようなものが見えてきた。いかにも自動ドアな感じなんだが……


フォン


 という音とともに扉が開く。やっぱりか……明らかにおかしいだろ! 文明のレベル中世ヨーロッパじゃなかったのか? 意味がわからない。


「シェスカ、これはなんだ?」


「あはは、最初は驚くよねー。私も最初は驚いたよ。ここはねー、マスターが若い頃にずっと鍛錬で使ってたところなんだって。なんかマスターのお父さんが知り合いの魔法師にお願いしてる食ってもらったんだって」


「魔法!? ここには、魔法もあるのか?」


「知らなかったの? さっきヴィヴィちゃんも魔力がー、って言ってたじゃない。とにかく、魔法の力でここは現実世界にはあまり影響が出ないように守られているの。だから、どんなに大技を出したりしても近所迷惑にはならないんだー。ま、入ろ!」


 マスターが何者なのかは、ちょっと気になるとこではあるけど。俺は扉をくぐった。中は、四方が真っ白な壁に覆われた、学校の体育館くらいはある大きな部屋だった。


「早速だけど、はい、これ持ってー」


「これは、木刀か?」


「そうだよー」


 と言いながらシェスカは部屋の中央へと歩いていく。


「よし! 私はここから一歩も動かないから、かかってきなよ! それでルフレがどれくらい剣術ができるのか見てあげる!」


「なるほどね、わかった。よろしく頼む」


 俺は軽く木刀を振り回してみる。


Information


スキル:剣術 Lv.01を獲得しました。


 まただ、絶対にバグでしょこれ。と思いながら、俺は剣を構えた。

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