第97話 ドラゴンvs猿 3



俺は全力で雷を壁に出現させた。


…………まだ60%だな。


《熟練度が一定に達しました。スキル感覚領域拡張|2⇨感覚領域拡張|3になりました》


《熟練度が一定に達しました。スキル気配察知|1⇨気配察知|2になりました》


よし、雷を出すのに集中していた為か、スキルのレベルが上がった。

よし!行けるぞ――――ッ!!


ん?なんだ、ちょっとクラっとして…………あ、そうか!

MP切れか!


めちゃくちゃ頭が痛い……集中力が切れるな…………

よし、MPを回復するか。


この世界では、MPの回復方法は少ない。

時間経過で回復するか、

ポーションを飲んで回復するか、

他人から特殊な魔法を使ってもらってMPを回復するか、

もしくは…………


特殊なスキルで回復するか。


俺は仮拠点の中に居る猿の死体を取り出した。

この猿の死体は今壁に登っている奴から取った訳ではない。

これは気配察知を覚えた時に殺した猿だ。


いや〜、運ぶのめちゃくちゃ大変だったんだよ?

それじゃあ…………


ムシャムシャムシャムシャムシャ……

うげぇ、猿を生で食べるのは良くないな……めちゃくちゃ血の味がする。

……あ、食事中の人には申し訳ない。


…………スキル『悪食』には

敵を食べた時経験値補正

敵を食べた時ステータス補正

の他にもう一つスキルがある。


MPHP


そう、このスキルは敵を食べたらMPとHPが回復するのだ。


……よし、これでMP切れが無くなった。

食べる相手、食べる量によって回復量が違う。

こいつはあまり回復しなかったがな。

でもMP切れを治すのには十分だ。


…………まだ80%だな。


ハハッ、面白いように猿たちが俺の作った罠……雷の玉に引っかかっていく!

どうだ?痺れて動けないだろう?


お前らみたいな猿なんかじゃ動くには少し時間が―――――ッ!!!


俺の罠に引っかかった猿から突然、腹から手が生えてきた。

…………いや、下に居る猿が貫いたのだ。その手で仲間の腹を。


「きぃ…………」


……………………ぐちゃっ…………


腹を貫かれた猿は地面に落ちていった。

鈍い音をたてて。



イエローモンキー Lv24


HP 0/2049



死んでいる。

まぁ、仲間に腹を貫かれて高い所から落ちたら当然死ぬだろう。


猿達は邪魔を生むぐらいなら、仲間でも殺すのだ。

俺はその考え方に凄いとも思ったが共に、怖いとも思ってしまった。


俺は猿達の事をナメていたのかもしれない。

さっきまで俺は『死ぬ』『死ぬかもしれない』ということを言っていたが、まだふざける余裕があった。

この猿達がいくらいようと、俺の命を狩る存在ではないと。そう思っていた。

この猿たちは止まらないのだ。

俺を殺すか。それとも、自分達が死ぬか。

このさるたちは敵ではなく、俺の命を狙う狩人だ。


俺はどんなに猿たちの遠距離攻撃がこようと魔法を打ち出した。

猿たちの攻撃?

それがなんだってんだ。

ただ石を投げる程度の攻撃では俺はへこたれない。

これはただの戦いじゃないんだ。

殺し合いだ。


猿たちの石が当たる。

俺のHPが減る。

そして猿たちに俺の攻撃が当たる。

猿たちが死ぬ。


猿たちの石が当たる。

俺のHPが減る。

そして猿たちに俺の攻撃が当たる。

猿たちが死ぬ。


猿たちの石が当たる。

俺のHPが減る。

そして猿たちに俺の攻撃が当たる。

猿たちが死ぬ。


猿たちの石が当たる。

俺のHPが減る。

そして猿たちに俺の攻撃が当たる。

猿たちが死ぬ。


猿たちの石が当たる。

俺のHPが減る。

そして猿たちに俺の攻撃が当たる。

猿たちが死ぬ。


俺はただこれを繰り返していた。

どんなに猿たちの攻撃がきようとも。


この戦いでの俺は、圧倒的弱者。

ただのちょっと強い一個人では集団には勝てない。

確かにこいつらはタロさんよりも弱い。

地龍よりも弱い。

だからなんだってんだ?

こいつらがいくら他の奴に比べたら大したこと無いからってこいつらが俺より弱い理由にはならない。


そんな俺より強い猿たちの軍団に対して俺はどんなにナメていた?

俺に勝る脅威が俺より命を張ってんだ。

俺が命を張らない理由にはならない。


俺は全力で下に居る猿たちを相手していた。


そう、全力で。


だから俺は気づかなかったのだ。

俺の攻撃範囲外から少しずつだが迫ってきている、脅威に。


が俺の尻尾を掴んだ。


「誰だ!?」


そう、俺の後ろには猿が居たのだ。


クソッ!最悪だ!

多分こいつは俺の攻撃範囲外からバレずに、すっごい遠回りをしてきて、俺の居るここにたどり着いたのだろう。


クソッ猿が俺の尻尾を全然離そうとしない。

それどころか尻尾を握り潰そうとしてくる。


「その手を離――――――ッ!!!」


ぐちゃっ…………

俺の尻尾から、気持ちの悪い音が流れた。


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!

ヤバい、死ぬほど痛い。

これは大量の精神力が無かったら頭がおかしくなってたな。


俺は恐る恐る猿が握っている、俺の尻尾を見た。

クソッ、完全に潰れている!

どうにか治るか?

いや、俺はそれに賭けるしか無いだろう。

俺は回復魔法をまだ覚えていない。


どんなに全力に覚えようとしても覚えれなかった。

それは種族の特徴故なのかわからない。


取り敢えず俺の尻尾から手を離しやがれ!!


俺は尻尾から雷を出現させた。


「――――キッ!!」


よし!猿が手を離した!


よくもやってくれたな!猿め!!


俺は痺れている猿の後ろに素早く移動し、首元を牙で噛んだ。


《イエローモンキーを撃破しました。3000Expを獲得しました》


はぁ、疲れt―――――――グッ!!

俺は戦った疲れでふらついてしまった。

ふらついてしまったのだ。俺が戦っている途中に登って来た猿たちの方へ。


チッ、もう登ってきたか。


………………100%になった!


よし!!!


俺は猿たちが居てもお構いなしに仮拠点に居る猿。

壁を登っている猿に攻撃が当たる位置に移動した。


クソッ、無理やり移動したから猿たちにボコボコにされてしまった……


HP 1402/6401


HPもギリギリ…………だが。

俺には秘策がある。

ただそれはとても長い時間のタメがいる。

それはついさっき溜まった。

あとはただ……放つだけだ。


「死んどけ猿どもおぉぉ!!!」



「雷槍爍撃!!!」



俺がそう叫んだ瞬間、辺り一面、とてつもない光と、音に包まれた。

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