第86話 タロさん家



「……出来たべ!!」


「おお!」


タロさんがそう言うと、とても美味しそうな匂いがする料理を持ってきた。


「ささ、食べてけれ!!」


俺の目の前には、


とてつもなく大きなステーキ、

黄金色をしている揚げ物、

ふっくらとした身をしている魚、

家の裏で取れたのであろう、新鮮な野菜。


や、やばい。死ぬほど美味そう……

最近は虫か、中身が酸の魚しか手べて来なかったからな……


「い、いただきます……」


俺はおそるおそる料理を手に取った。


「――――――ッ!!?なんだコレ!?」


ああ、口の中で天国が出来ている……いや、ここが天国なのか。

ああ、天使よ。

今ならタロさんが天使に見えてくる。

……まぁ、実際は鬼なので地獄っぽいが。


「ばくばくばくばくばくばくばくばくばくばくばくばくばくばくばく」


美味い!!美味すぎるぞ!この料理!!

この料理を現代日本に出してとしてもミシュランとれるぞ!?


「……おでの料理…………美味いだべか?」


「ふゅまじゅぎゅりゅじょごのじゃじょう!!!(美味すぎるぞコノヤロウ!!)」


「……そうかそうか!!さぁ、まだまだあるべ!!!」


良かった。タロさんには伝わったようだ。


「…………いや〜、良かったなぁ……こんなに美味しいなんて言われて……ほんと、ありがとなぁ…………」


なんでアンタが感謝するんだよ!

全く……感謝したいのはこっちだつうの。





ーーーーー





「……ふぅ、もう食い終わっちまった」


確実に10キロ以上はあったであろう、飯がもう無くなっていた。

うん。美味すぎる。

美味すぎて違法。


「はー、もう腹いっぱいだ」


《熟練度が一定に達しました。スキル過食|1⇨過食|2になりました》


《熟練度が一定に達しました。スキル過食|2⇨過食|3になりました》


《熟練度が一定に達しました。スキル過食|3⇨過食|4になりました》


うわ〜、スキルがこんなに上がっちゃって……どんだけ食ったんだ、俺。


「……いや〜、こんなに食うとは思わなかったべ!おで以上の量を食ってるなぁ…………」


え!?俺オーガ以上の量食ったの?


そりゃあ、お腹がパンパンになるわけだよ。


「いや〜、もう何も食べれないな…」


俺がそういった瞬間、タロさんが固まった。


「ん?」


「……あ……もう食べれないんだべね……一応デザートは作ったんだべか……」


「え!スイーツ!?」


こんな事を言っては何だが、俺はかなりの甘党だ。

毎回、3時のおやつはかかさない。


よく、学校の近くのスイーツ屋に寄っている。


「スイーツ食べるだべか!?」


「当たり前だろ!!……スーイーツ♪スーイーツ♪スーイーツ♪スーイーツ♪」


俺がそんな事を言っていると、タロさんは涙を流して……


「分かったべ!!!今すぐ持ってくるべ!!!」


タロさんは超特急でキッチンへ戻った。


ドドドドドドドドドドドドドドドドドド…………………………………………


「はぁはぁはぁはぁ…………持ってきてべ!!!」


「おおおおおおお!!!!!!」


タロさんが大きくて、とても美味しそうなパフェを持ってきた。


「いっただきま〜す!!」


俺はこの美味しいパフェを、これでもかと言うほど堪能した。


《熟練度が一定に達しました。スキル過食|4⇨過食|5になりました》


邪魔だお前。





ーーーーー





「……プハー!!食った食った!…………ゲプッ」


ああ、お腹がはきち切れそうです。


「いや〜、こんなにおでの料理を食ってくれた者は初めてだべ〜!!」


「そうか…………所でタロさん。俺…………ここに住んでも良いかな?」


俺はダメ元で頼んだ。


「別にいいべ?」


「そうかそうか。やっぱりだめだよな。分かった出ていk――――――ッ!!!!」


え、良いの?

こんなドラゴンが住んでいいの?

こんな初対面の奴が住んでいいの?

大丈夫?この家のセキュリティー大丈夫?


「……本当に良いのか?」


「良いべ、良いべ!……逆に…………こんなおでと一緒に住んでくれるだべか?」


「―――――ッ!!当たり前だろ!!タロさん!!」


ああ、なんでこんないいオーガがこの世に居るんだろう。


この世界の種族の差別が無くなったら……いいのにな…………


「……へへっ……一つ、疑問に想うんだべか……なんでレオンくんはおらにこんなに親しく接してくれるんだべか?」


「……なんでか…………」


う〜ん、なんでだろう?


俺が鬼を好きだから?

いや、違う。

優しいから?

それも有るともうが違う。


「俺が……鬼門法という物を使えるって所もあるんだが…………一番の理由は……タロさんの事を出来た所かな?」


「ん?尊敬?おでの事をか?」


「ああ。タロさん。アンタは仲間から、敵を倒せないという理由で追い出されたんだろ?って事は、追い出されるまで、相手を殺すということをしなかったということだ。普通そんな事出来るか?仲間、上司、知り合い、他人にも相手を殺せないへっぴり腰の奴っていうレッテルを貼られたんだぜ?でも、タロさんはその意思を守った。守り抜いたんだ。その事を、俺はすごいと思う。誰が、なんと言おうとも」


「―――――――ッ!!!!…………うぅ……」


え?なんで泣いてんだ?タロさん?


「おで……今までそんな事言われたことが無かったから……何時も、周りのオーガ達からは……『無能』『意気地なし』『まともに戦えないゴミ』って言われ続けてきて……おで、そんな事言われて…………満足だぁ」


鬼の怖い顔をしていたタロさんの顔が、涙で濡れていた。


「ハハッ、ビショビショじゃねぇか」


「……あれ?ハハッ、こんなに泣くつもりは無かったんでけども……涙が…………とまれねぇや」


「なんで泣くんだよ……」


ホント、タロさんの人生に比べたら、俺の人生なんて、悲しいもんじゃないな。


俺はただ、訳も分からずに親にいじめられて……


やっと転生して、学校に入学しても、


ボルトにはいじめられ、

アイリーンには、周りの奴等に悪口を広められ、

ラシードには、逆恨みされて、殺されそうになり、

周りの奴等には、ただ喋っただけで、


「キャアアアアアアアアアああ!!レオンさんに話しかけられたぁぁぁぁ!!尊いぃぃぃ!!」


叫ばれて。


「クッ、レオンの悪評はまだ広まらないか。もっと皆から、レオンを引き離して、我の物にせねば……」


アイリーンには、隣な聞き取れないぐらいの音量でブツブツを言われ。


あれ、何か涙が出てきたな……俺の人生も中々ハードな人生では?


「……まぁ、お互い色々あるけど、頑張っていこうや!!」


「ああ!そうだべ!!!」


「よ〜し!そうと決まったら今日は朝まで宴会だ!!」


「お〜!!」


俺は宴会中、今までの事を、全てタロさんに話した。

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