そんなこんなで生きています

@_mino

器用な光景

 毎日なるべくたくさん歩くようにしている。できれば1日1万歩は歩きたいところだけど、8,000歩以上なら上出来!と自分に甘くなってしまう。休日は引きこもり気味なおかげで5,000歩もいかない。これではマズイ。と思って少し遠いスーパーまで行ったり意味もなく外を出たりするようにして、なんとか毎日8,000歩以上はキープして生活している。

 ある日、スーパーから自宅に向かってテクテクと歩いていると正面の交差点から自転車に乗ってこちらに曲がってきたひと組の男女を見かけた。天気のいい昼下がりのなんてこと無い光景だったが、印象に残ったのはその後。並走して自転車を進めながら何やら揉めているではないか。

「ねぇ、聞いてるの?昨日から同じことを何度も言わせないでよ!私、言ったわよね」

 勢いよく男性に何かを主張している女性と、しまったなぁ。という顔をして自転車を進める男性。「うーん。」とか「そうだけど……」なんて言ってはいるもののその顔は弱々しい。ははーん。何か同じ過ちを繰り返しすぎて責められておりますなぁ。などど失礼極まりない想像をしながら通り過ぎた自転車を振り返る。一定のペースを保ちながら、相手に話かけ返答もする。それに加えて、周囲の様子も確認。なんてマルチタスク!!さながら曲芸。どこでその技術を身につけましたの?特別なドライビングスクール?それとも学校の交通安全教室で実はこっそり教えてもらえたのかしら。いずれにしても同時にたくさんのことをこなせつ器用さに憧れてしまう。私なら相手と一定のペースを保って周囲の様子を確認するだけで精一杯。それ以上を同時にこなすなら事故を起こす自信がある。そう思いながら中学生の頃、自転車を漕いでいた時に歩道から飛び出してきた猫にびっくりして電柱にぶつかったことを思い出した。あれは本当に痛かった。なんとか帰宅してふと手を見ると腫れているではないか!左右でダイエットのビフォーアフターができてしまうくらいに。元々クリームパンのような手だから違いがわからないなどと、言われながら翌日の病院で見たレントゲン写真にはヒビの入った写真が映し出さされてしまった。このパンパンに腫れた肉の下には日々の入った骨が……と少しの儚さを感じながら自分の手を繁々と見ているうちに包帯でぐるぐる巻にされて行く私の手。幸い聞き手ではないため生活には支障はなかったものの包帯が取れるまで、ヒビくらいで大袈裟なのよ。と母の小言を聞くハメになってしまった。

 かたや自損事故でかたや曲芸運転。どうしてここまで違うのだろうと思いつつも、人間ってそういうものかぁ。と全てを丸く収めるような考えにたどり着いて明日もまた歩くのである。

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