【新連載】聖アンナと〈鏡の死〉
春坂咲月
第1話 トマヤ国の御伽噺
トマヤ国の御伽噺
昔々――の二千年前。
起きた戦争は、それはそれは苛烈なものでした。
高度文明と七つの大陸が、一瞬で海の藻屑となって消えるほど。血で血を洗う――それ以上に悲惨な結果を招いた戦で。
生き残った人間は、ほんの一握り。
それなのに、人々は性懲りもなく僅かに残った土地を巡って、再び争いを始める始末です。
愚かなり、人間共――
とうとう、人々は月の女神ナールの怒りを買ってしまいました。
女神は人々を罰し、枷を与えました。
それが〈鏡の死〉。
人を殺せば、我が身にも死が跳ね返る。
己の寿命が、殺した相手と同じになってしまう。自分より年若い相手の命を奪えば、己も瞬時に絶命し、年上の人間を殺したときには、相手の年齢と同じになる自分の誕生日の午前零時に死の呪いが発動し、己の命は消え失せる。
さらには、人を殺めた者が死に至るとき、鏡に映したみたいに、相手を殺したのとまったく同じに、暴力が跳ね返る。
剣で胸を突けば、己も心臓を貫かれ、
殴り殺せば、己も撲死、
毒殺すれば、己も同様に胸を掻きむしり、のたうちまわって死ぬことになる。
〈鏡の死〉とは、そういう呪いでした。
恐ろしい枷でしたが、簡単に争いが始められないようにしようとした、月の女神の苦肉の策だったのです。
おかげで、国と国との争いは回避されるようになりました。
それからずっと、表立っての戦争は起きておりません。
けれど、戦争の影が消えたいまとなっても、依然として〈鏡の死〉は息づいたまま――
・・・・・・・・
題名に〈死〉が入っておりますが〈死を打ち負かす〉がテーマです! 一応恋愛ファンタジー&ミステリー小説です。
週一回金曜日更新を目指して頑張ります!(春坂より)
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