時の欠片 - 祖父母が遺したもの -
橘花あざみ
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曽祖父の代から受け継がれてきた父の実家であるこの旧家も、住んでいた祖父母が亡くなったことを受け、相続人である父は最初相続することを渋っていた。
父の実家があるのは長閑な田舎町で、普段東京住みの僕たち家族にとってリフォームして住むのには遠いし、人に貸して宿泊施設としての再利用するにしても、周辺は特に何も無いのでそれも難しい。
父は親戚や地元の友人らに相談し、結局9月で実家は解体されることになった。
そこで両親と大学生の姉と僕は解体作業が始まる前に夏休みを利用して実家に残る荷物を運び出す作業をすることになったのだ。
作業当日、解体の話を聞いた父の学生時代の友人達が手伝いで来てくれたので、大きな家具類を運び出す手が多くて助かった。
祖父母は生前、父や他の親族らに迷惑をかぬようにと早くから準備をしていた様子で、2人とも最低限の衣類だけを残し、後は処分してしまったようで、祖母は私物や台所周りの食器類も自分たちが使う分しか殆ど無く、かなりの大仕事になることを覚悟していた姉と母はホッとした反面、拍子抜けしてしまった様子だ。
トラックが到着して、古い冷蔵庫や祖母のお気に入りであった化粧台、年季が入った大きな箪笥…曽祖父母から祖父母へと二代に渡って共に過ごし、日常を見つめてきた思い出の家具類が次々と運びだされ、家中はあっという間に広々とした空間に変わっていった。
「ねぇ!この扉、何?!」
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