第12話 ポーカーフェイスを崩さない

 俺はポーカーフェイスを崩さない。


「……お、おぉ! よく来たな!」

「えぇ」

「ささっ、入ってくれ、入ってくれ!」

「はい。失礼します」


 俺は心の中でガッツポーズをする。

 ──よしッ!! 第一関門突破だぜ!!!

 俺のポーカーフェイスを持ってすればこれぐらいは訳はない。

 こうして俺は無事に屋敷の中へと入ることが出来たのだった。




「それで、あの場所で一体何をしてきたんだ?」


 俺がソファーに腰掛けると向かいに座った男はすぐに本題を切り出してきた。

 俺はお茶を一杯飲んでから訊いてやる。もちろんポーカーフェイスでだ。


「俺が何をやってきたのか気になるのか? まぁ無理もないか。だが安心しろよ。別に誰かを殺しに行ったとかそんなんじゃないんだからさ」


 そう言って俺は静かに腕を組んだ。もちろんポーカーフェイスでだ。

 すると男は少しだけ眉を寄せて、


「じゃあ何しに行ったんだよ……お前の顔を見ただけじゃ分かんねえよ」


 なんて言ってきた。

 だから俺は少しだけ間を開けてからこう答える。


「んー……まぁ一言で言うなら宣戦布告ってやつかな」

「は? なんだそれ……」


 男は困惑した表情を浮かべている。

 それもそうだ。いきなりこんなこと言われても意味わかんねえもんな。

 だけど残念ながら俺は多くの言葉を語るつもりはない。


「このお茶旨いな。どこの茶葉を使ってるんだ?」


 だから俺は話を変え、お茶について質問をした。

 すると男は少しホッとしたような顔になって、


「おっ、分かるか? これはうちの屋敷の庭にある畑の葉っぱを使ったものだ」


 と言ってきた。

 ──なるほどな。確かに美味しいはずだ。だってあの立派そうな畑の葉っぱを使って作ったお茶なんだもんな。


「へぇーいい趣味してんじゃねぇか」

「だろ? 俺のお気に入りなんだ」


 そう言うと男は嬉しそうな顔をする。そして続けてこう言った。


「で、あの場所へは何しに行ったんだ?」

「ふむ、気になるか?」

「気になるよ」

「教えてやらないと言ったらどうする?」

「お茶を返せ」

「ふむ、仕方ないな」


 俺は彼にお茶を返してやった。

 もちろんこれもポーカーフェイスでである。

 彼はとても驚いた声を上げる。

 それからしばらく呆然としていたがすぐに我を取り戻したようで、


「……お、おい、まさか……やっちまったのか!?」


 と訊いてきた。

 だから俺は素直に答えてあげることにする。


「返す物は返してやっただろう?」

「つまり真相は?」

「俺の中だけに仕舞っておこう」

「気になるんだよ―!」

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