第6話 星座に挑む

 星座に、一際大きな星が一つ。

 その光は、まるでこちらを誘うように瞬いていた。


「……行くぞ」


 俺は短く告げると、その光のほうへと駆け出した。

 ――俺たちが降り立ったのは、巨大なクレーターだった。

 直径はおよそ五〇〇メートルくらいだろうか。

 隕石でも落下したかのような、凄まじい破壊の跡だ。

 しかし周囲には草木一本生えておらず、この辺りだけ不自然に荒廃している。

 そしてクレーターの中央には、天に向かって伸びる巨大な塔があった。


「あれが星座の監視塔か」

「みたいですね……」


 俺とエリスは、呆然とその光景を見上げる。


「でかいな……。しかもなんだ? あの光る部分は?」


 塔の先端から、光が溢れているのだ。

 星の輝きのようなそれは、よく見ると七色の光を放っている。


「さあ、ここからだとよく分かりませんね」


 エリスも首を傾げる。


「とりあえず登ってみるしかないか」


 俺はそう言うと、塔の入り口らしき扉に手をかける。

 だが……


「開きませんね」


 押しても引いてもビクともしない。


「壊してみますか?」


 エリスが拳を構えてみせる。


「いや、待ってくれ。どうもこの塔は何かおかしい気がするんだ」


 俺は改めて周囲を観察する。

 ここは恐らく、星座にとって重要な場所なのだろう。

 しかし……入り口にしては大きすぎるし、何よりこんなにも荒れ果てた状態になっていることが不可解だ。


「少し調べたいことがある。エリスはこの辺を探してもらえるか?」

「わかりました!」


 元気良く返事をするエリス。

 彼女は早速クレーターの縁まで走っていくと、周囲をぐるりと一周し始めた。

 俺はそれを見届けてから、目の前の塔に集中する。


「よし……」


 俺は腰に差していた剣を引き抜くと、上段に構えた。

 そしてそのまま振り下ろす!

 ――キィィン!! 甲高い金属音が響き渡る。


「くっ!?」


 思わず顔をしかめるほどの衝撃が腕に伝わる。

 見れば刀身は、塔の外壁に当たったところで止まっていた。

 俺はすかさずバックステップすると、距離を取って様子を伺う。


(なんて硬さだ)


 まさかとは思ったが、ここまで硬いとは予想外だった。


「……」


 俺は無言のまま思考する。

 果たして今の一撃で、どこまでダメージを与えられたのか。

 仮にあの部分に、攻撃が通るようならいいのだが……。

 俺は再び剣を構えると、今度は側面に回り込むようにして斬りつけた。

 だが、無駄だった。星座は輝き続けるだけ。

 今も変わらずに夜空を巡って照らし続けるのだった。

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