第6話子猫のワルツ

 ピアノを弾く、その御手、透き通るように、揺蕩う、リズムのセクション。

 クールな僕は、連弾の君の手にそっと触れる。

 ドキリっとして、手がさまよう。スコアを求めた手が、君の頬にそっと触れた。

 君は涙を流した。まるで子猫がワルツを踊るように。

 椅子から立ち上がり、ベッドへと抱っこをして、導く。それは魂。恋の躊躇い。

 僕は君の心に揺れて、酔うように、手に手を重ねる。

 握り合う。

 そして、永遠に一瞬を刻み込むように、求め、求め、愛を唄う。

 月夜に狂う情念の陰り。

 奥へ、誘われ、また、もっと、先へ。

 深く、深く、もぐりこむ茂みの奥へ。

 ピンクのなめくじのように、どろりと深まる恋煩い。

 そして、夜が明ける。

 子猫のワルツは、朝に鳴く。


                             モネのために

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