第4話モーニングアフター


電子の海に溺れる。

完全な非定型ピアニシモ

緩やかなカーブ

崩れる生命の余韻。

恐れることもない、何もなければ、君の耳がある。

三重苦のヘレンケラー。魂を鼓舞するオプティミズムの優しい微笑み


彼女はいう。

「世界なんて、きっとこんなものよ」

僕は答える。

「あなたは、まだまだ自由の意味を知らないのでしょう」

彼女はいう。

「きっとヘレンケラーはあなたみたいな人が一番好きだったはずよ」

僕は答える。

「屈しない。けれど、僕は強くはない」

「そういうところよ。あなたの魅力は」

「え、そうなの?」

「そうなんですよ」

「はい」

と電子の海の先のイルカの群れが、ピアノに呼応して、歌声を重ね合わせる。

非定型のピアニスト。

揺れ動く、微睡のしじまで。指が触れる。連弾の高揚感。

僕ら非定型のせむしぐさは、腐るか売れるかしなければ、いつかむしり取られる現実に。

 

イルカが鳴いて、目が覚める。

楽園型逃避行妄想詩人

洗練された線弱なワルツ。

僕ら乱暴なランボーもどきの戯言が、地中を潜って、そこに着く頃、エデンはきっと僕らを待つ。

自由、孤独、権威の贋金トロフィー。

そしてイルカが眠る頃、僕らは夜に生きる。そして未来を信じる。朝が来てモーニングコーヒーを淹れる。夢から覚める。歌が始まる。永遠が今になった。グットニュース、ビッグな英雄ワルツ。いつも初めは、ショパンの嘆き。初めはきっと今この瞬間、それから副交感神経の起立。着席、授業が始まり、さようなら。

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