復活の翼
私は実態を持たぬ体となって白く…そして、どこかの神社の参道に似たような道を首より上がない透けた影のような人間たちと一緒に光へ向かい歩き続けた。
歩き続けていると、私の死を知った先祖たちだろうか?様々な時代の人間たちがぞろぞろと集まってきて、そのうちの一人がどういう訳か話しかけてきたのである。
「君は右へ行きなさい」
その言葉を適当に鵜呑みして私は死者たちとは違う道へと歩みを進めた。
その道はとても暗く明かりは一つも見えないので当然ではあるが怖くて足が思うように進みにくい。それだけでなく行き場のない「本当にこの道であっているのか」と言う不安が私を襲うのである。
そこに明かりを持った一人の少女が現れる。
「伏見翼あなたは死にその体はもう…どこにもありません」
「...」
「ですが…あなたにあなたにもう一度生きるチャンスをあげましょう!」
「どちら様ですか?」
「私はあなたを呼んだ神です」
自ら神だとこの幽世で言うということはそれに近い存在なのだろう。
だがしかし、解らないことがある…なぜ殺す必要があったのかと言うことである。
「なぜ、呼んだ」
私は神と自称するものに強い口調で問いかけた。
「それはあなたが寿命だったからと言うのと私のノートを見てしまったからです」
「どのみち死は避けられないのであれば仕方ないことだろうけど、なぜ私に生きる権利を与えるのでしょうか?」
「あなたは私の分身体を見ているからです」
「と言うと……」
「実は私の分身体がメモ帳の情報を漏洩して、暴走して人々を惑わしているのです」
「それでどうしろと?」
「分身を倒すかこちらの世界に戻してほしいのです」
「何ともわがままなお願いだけど、生き返れるなら…」
「間もなく一人の少女の生命が終わります…その少女の御霊にあなたが乗り移るのです」
「間もなく時間切れになります。早く走るのです」
暗い道をひたすら走り続けると、目の前が急に明るくなって誰かに渾身の力を込めて蹴られたような鈍痛が走った。
目覚めると私はどうやら…
「生き返ったぁ~」
久しぶり、身体。
「あれ、この身体細いしやけに軽いな」
部屋の目の前に設置してある洗面台の鏡を見て私は本当に他の人間の身体に乗り移ったのだと気づかされた。
鏡に映っていたのは、高校生ぐらいの背丈の低い少女でその美しい顔立ちには「可愛い」と無意識に言ってしまった。
周りの見ると病院関係者2人と一般人らしき人が二人いて私のことを見て驚いている様子である。
「………」
大変に驚いた表情でこちらを凝視している姿は実に面白く同時に滑稽にすら感じてしまうほどこちらの心をくすぐる<場面>と言える。
「先生、これって息を吹き返したんですよね?」
とてつもなく顔の整った少年が医者に問いかけて詰め寄る。
医者は当然ではあるが、驚きのあまり声が出せないようである。
流石に、見ているだけでは可哀想なので自ら発言をした方が良いと思い重い口を開けることにした。
「私は蘇ったけど、中にいる人は違うから…その何ていうか、私の名前って何ですか?」
わぁ最悪だ、医者も少年もイケメン過ぎて目合わせられないし、変なこと言っちゃった!!
私は変な空気に耐えられずに治療室を逃げ出す。
「いやっ待って、この身体走るの遅っそ!」
あまりの遅さに口に出して言ってしまった。
「おい、待てよ翼」
私の足の遅さなのだろうか、病室にいた彼に追いつかれて後ろから抱きつかれてしまった。
神様のメモを拾ってから! 有栖川 黎 @Asaka_ray
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