唯我独蔑

どどめ

独白《どくはく》

胸に刃物を突き刺したら、何が溢れ出るだろう。赤い液体だろうか。辛い日々から逃れられる開放感だろうか、はたまた愛してくれた人々に対する申し訳なさだろうか。


自分はそんな事を考えながら、今日も一日を明るく過ごす。



僕は臆病者だ。





初めてそんな事を考えるようになったのはいつからだろう。こどもの頃は今を生きるのに精一杯だった。未来と見つめ合っていた。

いつからだろう、未来が怖くなったのは。いつからだろう、未来の目も見れなくなったのは。



僕はこどもが好きだ。とくに小学生くらいの自信に満ち溢れているこどもが。まるで自分が世界最強と信じて疑わない眼差し。そんな時期が僕にもあった。いや僕だけではない、男子諸君なら一度は経験したことがあるのではないだろうか。


事実、こどもは世界最強にだってなれる可能性を秘めている。努力次第で何にだってなれる。

そんなこの世の全ての可能性や希望を凝縮したようなこどもが大好きだ。


こども達は無色透明に輝いている。

そして僕はどどめ色。

多分そんなところだろう。



ここまで読むと、きっとあなたは僕の事を「日中いつも公園のベンチに座り、暗そうな雰囲気で家族連れを見つめる不審者」とでも思ったのでは無いだろうか。(図星の人、怒らないから挙手しなさい。)


実はあなたの期待通り...とはいかず、僕の生活は至って普通の大学生だ。しかし夜になると、こうして一人暗い小説を書いている。


普段はつくろう事なく明るく居ながら、

けると自分を殺めてしまいたくなる気持ちでいっぱいにになり、その後、何かと理由を付けては生きてみたりしている。

もしどどめ色の同類なかまがいるのなら、

その気持ちが押し寄せてきた時にこの小説を読んで欲しい。あなたのその夜を、僕も一緒に越えさせてほしい。



きっと僕等は死にたいんじゃない。

自分がどれだけ必要とされているのかを知りたいだけなのだ。でも僕等は頭が悪いから、それを知る為に自分で自分を一度殺そうとしないと、誰にどのくらい必要とされているのかハッキリと想像出来ないのだろう。

つまり死にたいのではなく生きたいのだ。必要とされたいのだ。

「大丈夫。君が思うよりも、世界は君が幸せになれるようにできてる。」

そう自分に言い聞かせながら今日も生きていく。


本質的には無色透明もどどめ色も何も変わらない。では何が違うのか。年齢は関係ない。歳を取っていても輝き、辺りを照らしている人間は沢山いる。

もっとも、違いに理由など無いのかもしれない。生まれつきこうなる運命さだめだったのかもしれない。しかし、自分に対する自信が輝きの核となっているのでは無いのだろうか。ここでの自信とは、見た目が良いとか何が得意とかそういった外面的なものでは無い。自分の人間としての本質。自分にしか分からない、誰にも言わないし言えない

""。それに対する自信だ。きっとその核となる自分に自信が持てる人、""の良さや可能性を理解している人が光り輝くのだろう。そしてそんな人は有名人やどこの誰よりも僕には輝いて見える。

僕はそんな人になりたいと渇望している。その時点で僕に輝く資格は無い。


この世で自分だけをただ蔑む毎日だ。でもその日々の中で僕は生きていく。


世界で一番輝くどどめ色を目指して。

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