ギフテッドスレイヤー ー異世界転生者殺しの勇者ー 「殺したいほど転生者が憎いなら、殺そう。手伝ってやるよ。」

浜中円美

第1話 PV

 PV(プロモーションビデオ) 異世界転生者ギルド『デウス・リベリオン』


単眼の巨人が、山の様な岩を振りかぶって投げた。

それを機に、他の魔物達が炎を、あるものは雷を、雹弾を放つ。

空と地平を覆う、この世界を支配せんとする魔王軍。

彼らは欲望のままに人類を蹂躙せんと、その爪を、牙を、剥いた。


――対するは。


「『プリズマティック大障壁プロテクション』!!」


 魔法剣士が手をかざすと、彼らに害成さんとする全ての攻撃が風に飲まれ、粉塵に帰す。


‘神の御子’ベル・ブラフォード。


本来ならば大司祭級の高僧が長い時間をかけて受ける神の恩恵を、彼は刹那のタイミングで行使することができる。


「キリュウ、今だ!」


 黒衣の戦士が双剣を構え、雄たけびを上げ、地面を蹴った。


「『現実仮想チェンジング・ワールド』!」


 一度世界が暗転し、時が止まる。彼だけがその静寂の中を滑るように駆けた。

剣が振るわれるたび、落ちる首一つ。死体が残ることもなく、ガラスの砕ける音と共に次々と怪物の巨体が崩れていった。


‘黒騎士’キリュウ。その実力は見ての通り。彼に敗北はない。


「掃討するぞ、フレイヤ、アレフ、エカテリナ!」

「つっぶれちゃえー!『理不尽クレイジー暴走ランウェイトラック』!」


 山の大きさの猪を模した鉄の荷車が空に現れ、地面に落ちる。当然下敷きになった魔物共の命はない。


‘選定の女神’フレイヤ。


彼女はれっきとしたこの世界の女神であり、転生者たちをこの世界に導いた、気高く美しい、その人である。


(……後半いらなくないか?)

(まあいいじゃん)


「地を担く畏し醜の御盾よ、地震ない岩崩いはくえと共に、御震の災を打ち据え給え!

 『アース・クラフト・エクシティペイト!』」


 やつれた姿が天を仰ぎ、祝詞を謳う。

 そして土の精霊のさらに上位、神霊に呼び掛けて大地を揺るがす。

 人類において、行使するものがいない魔術大系すら、彼にかかれば顕現する。


 ‘超越者’アレフ。


「『ククルカン』エネルギー装填。カウントスタート」


 空に、その身より巨大な大筒を構える影。機械でできた鳥のような姿。

 或いは、完全武装した神聖なる軍勢の先兵か。

 放たれた青い光が地平を薙ぎ払う。

 光の中に溶けていく影たち。もはや魔物の痕跡は、完全に消えた。


 ‘一人軍隊’エカテリナ・イオナカ。

 

 大地に開いた地割れが徐々に戻っていき、戦闘終了を知らせる。


 魔王軍に立ち向かう、異世界より召喚された希望の戦士たち。

 異世界転生者ギルド『デウス・リベリオン』

 

 リーダー ‘黒騎士’ キリュウ

副リーダー ‘超越者’ アレフ

 メンバー ‘異世界レストラン’アレイスタ

 メンバー ‘原初の水’ルル=ドラージ・ウェイク

 メンバー ‘一人軍隊’エカテリナ・イオナカ

 メンバー ‘暗躍令嬢’カトレア・クローネ

 メンバー ‘後宮楽園’ミツキ・ヤマナシ

 メンバー ‘神の御子’ベル・ブラフォード

 メンバー ‘永劫回帰’ミチホシ・マツダ


――そして、彼らの魂を召喚した、美しすぎる‘選定の女神’フレイヤ


(だからそれいらねえって)

(印象操作)

(だまらっしゃーい!)


巨大な魔力と、知性を持つ魔神に率いられた魔族と戦えるのは、彼らしかいない。


(あのさ、俺、暴れてないんだけどいいのかー?)

(ルルが暴れたら、この世界の人が引いちゃうから、ダーメ)


我らが先陣を切ろう。

この世界を守る、強い意志を持った戦士たちよ。

我らは、旗持ちを求めていない。

等しく、鐙を並べ、巨悪を打ち倒そう――同志よ。


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