四章 魔法使いのゴールデンウィーク
029話 辛いのはセルフ監禁か?フルボッコか?
夜の水岡邸では希更が自室で悶えていた。
「膝枕とか抱きついたりとか、て繋いだりとか明日どんな顔して、真治に会えばいいのよ・・・」
思い出すとかなりイチャイチャしたのは間違いない。そしてナンパ男達を撃退したのはカッコ良かった。助けてばかりの自分には、ないと思ってたのと、弱いと言ってた真治のギャップに顔を思い出しても更に悶てしまう。
「うー、どうしよう?おはようございます?違うかな?えっと、おっはー・・・変かしら?」
考えれば考えるほど、どう挨拶してたのかも思い出せない。ヤバいカッコ良かったそしてどうしよう。これしか頭に浮かばない。
「どうしよう、告白されてないし、やらかしたかなぁ?ビッチとか思われたかな?」
とにかく想い人である安倍真治の気持ちが気になり不安になる。最も心配しているが、全く好きが伝わっていないので無用の心配である。
するべき心配は、カン違いを正せるかであるが気が付くことなく、希更は徹夜するのであった。
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遊園地で希更さん達と楽しく遊んでちょっと高校生ぽい休みだったと思う。
そこまでは良いとして、親父は仕事なのは当たり前、義母もお弁当を残して学校に居る。
天使ちゃんさえいないので、ダッシュしないと遅刻する時間である。どうやら昨日の疲れは楽しくて気が付かなくて、寝坊したらしい。
「そうなら良かったのに!!学校の先生が遅刻を推奨してどうする!!」
目覚まし時計のアラーム設定時間が変えられており、置き手紙がある。
『月曜日の憂鬱な朝くらいゆっくり重役登校を楽しんだら良いと思うの。出欠くらい任せない』
「いやいや、せっかく昨日バレなかったのに!!これは親子ってバレるでしょ!!」
『お兄ちゃんへ 遅刻しても大丈夫そうなので、起こすのやめます』
「天使ちゃんそうだけど、遅刻は悪い事だから!!」
ツッコミをしても貴重な時間の浪費なので、大急ぎで用意を済ませて、お弁当を持って家を出る。
絶妙に諦めたくなるけど間に合わなくもない時間で普通に用意したら一限目には間に合う時間にアラームが設定されてる。これは怒りにくいし、バイトも多くて寝不足を心配されてるから仕方ないとも思う。
「ぜぇぜぇ、朝から走って登校は辛い!!だけど遅刻は出来ない」
何しろ担任の先生が揉み消す気だからバレるとか以前の問題だって!!息子をそんなにヒモにしたいのかな?
教室へ本鈴とほぼ同時に駆け込む。
「それではホームルームを始めます。それで熊尾を誰知らない?」
担任の先生が華麗に俺をスルーして何事もないかのように、クラスへ問いかける。クラスメートは確かに居ないと知らないかとざわざわする。
さすが親バカだなと思う。これは俺のギリギリ登校は綺麗にクラスメートからは忘れられただろう。
「先生、熊尾を最後に見たのは遊園地の激遅ジェットコースターです」
希更さんが報告する。そういえば、15時間かかるジェットコースターに熊尾龍太は乗り込んだな。
「あっそう、それじゃ無断欠席で処理します。本日の連絡事項は、もしもゴールデンウィークにクラスでなにかするときは届け出をするようにしなさい。以上」
あっさりとホームルームは終わった。
荷物の整理をごそごそしてると、希更さんが、やってくる。
「えー、あー、うー、お、おはよう?」
「希更さん、聞かれても困るかな」
希更さんがどんどん赤くなる。これは怒ってるか?
「あぁ、もうそうじゃないでしょうが」
「そっか、希更さんおはよう」
希更さんがまたしてもあー、うー、言いながら固まる。
「安倍ー、水岡に何したんだ?」
希更さんが固まってる隙に、虎井遥輝が声をかけてくる。そんなに希更さんの様子は、珍しいのだろうか?
「別に今日はまだ挨拶だけしかしてないけど?」
「あー、今日は?それよりもさ天使ちゃんの好みを俺達に教えて欲しいんだけど?」
「そこのネコ科!!邪魔すんな!!だから俺達ってのがキモいのよ!!」
再起動した希更さんが虎井遥輝の脇腹へ靴の爪先を突き立てて、そのまま振り抜く。不可抗力で希更さんのスカートの中身が見えた。
普通に体操服のハーパンだった。
虎井遥輝は割とヤバい感じにくの字になって飛んでいく。
「きゃ~!?女の子に突っ込んでくるとかヘンタイ!!」
上杉雪菜さんが虎井遥輝をおもいっきり隣の空いてた椅子を使って叩き落とす。普通に酷くね?虎井遥輝生きてる?
「真ちゃん怖かった〜」
上杉雪菜さんもやってきて怯えた感じで言うけど、貴女が犯罪者だと思う。
「ちょっ、ゆきゆき!?話しが違うでしょ?」
希更さんの言う通り怖いって話しは違うと思うなぁ。
「真ちゃん、心配しなくても、運動部男子は頑丈だから平気だって」
真田愛美さんもやってきてフォローしてるようで、彼氏になり隊のメンバーを((((;゚Д゚))))ガクガクブルブルさせてる。
本当に人間怖いときはガクブルするみたいだ。実際に虎井遥輝は痙攣してるし、まだ生きてはいるみたいだけどさ。
「みんなずるいよー、真ちゃんよ。あんな発情猫よりも、ゆなちーの太ももの方が楽しいよ?」
武田唯さんも来て、すっかり女子達に囲まれる。みんな天使ちゃんのお姉ちゃんになりたいって凄いよね。
「女の子の足を凝視したらヘンタイ認定されると思うかな」
「合意の上ならヘンタイ違うから大丈夫だよ」
「合意してもヘンタイはヘンタイだと思うなぁ」
運動部な女の子達に囲まれてる俺に、場違いな兎田友梨さんがやってくる。
「これを天使ちゃんに渡して感想を聞いてき来なさい」
薄いBL本で兎田友梨の趣味というか、高校生が持っててもアウトなんじゃない?って表紙をしてる。
「えっ、これはちょっと無理な気がする」
するとひょいと希更さんが薄いBL本をペラペラ捲る。
「どれどれ・・・これR18でもダメなやつ!!なんてものを、私の真治に渡すのよ!!兎なら田んぼの切り株に打つかって死んでしまえ」
それは待ちぼうけの故事だ。希更さん頭良くない?
希更さんは薄い本を3回折りたたむと握り潰してしまう。
「水岡!!何てことを許さないから!!」
折りたたんで握り潰した薄い本をゴミ箱を見ることもなくシュートしてゴミにした希更さんは、兎田友梨が取り返そうと伸ばした手を逆に掴んで止めてしまう。
「水岡の運動神経バグってるでしょ!!でも負けれないのよ」
兎田友梨は希更さんのに掴まれた手を護身術的な動きで振り払うと、見事に体重の乗った突きを繰り出す。
技術に裏付けされた攻撃を希更さんは、反射速度のみで対応し避けてカウンターまで打ち込む。
「ウサギなのに遅いのが悪いのよ。飛躍しなさいよっと」
希更さんのカウンターはなんとかガードした兎田友梨さんだけど、希更さんの追撃には対応出来ないで、腹パンを受ける。
「グフッ、無念」
割りと余裕そうな言葉を発する兎田友梨さんだけど、一撃で崩れ落ちて希更さんに汚物のように廊下へ捨てられる。
「きさらに殴り合いで勝てるわけないじゃんね。ワンチャンあるのは真ちゃんだけじゃない?真ちゃんも三人組やっつけたし強いよね?」
上杉雪菜さんがキラキラした目で言うけど、希更さんには勝てるビジョンがない。
「いや、希更さんは強すぎるって」
文化系女子からマジでお前もバケモノみたいな目で見られた。やっぱり俺って地味に虐められてる?
「確かにきさらは真ちゃんなら勝てないかもね。固まりそうだし」
真田愛美さんも追従する。遠くの女子達のバケモノみたいな視線が少しやわらぐ。
「それって無抵抗な女の子に手を出すってことじゃん」
武田唯さんが止めを刺してしまう。クズ以下の男かと最初より酷い視線を浴びる。
「ケンカになっても、不要な暴力はしないから!!」
「必要なら真ちゃんするの?」
上杉雪菜さんがちょっと引き気味に言う。
「ケンカって昨日のやつみたな時だけでしょ?」
希更さんが廊下から帰って来て助けてくれる。
「そうそう、友達と殴り合いはしないから!!」
「私はあんたとケンカしても勝つけどね」
希更さんが一番怖くね?とか思ったところで一限目が始まったのだった。
虎井遥輝と兎田友梨さんが授業に間に合ってるけど、あれは絶対に手加減はしてなかったと思う。
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