第13話 unknown短編小説2連発
【エロサイト】
高校3年生の俺は、教室で常に孤立していた。高校をサボりまくって留年の危機に瀕していた。将来のことなんてどうでもよかったから、勉強なんてしていない。この間の学年テストでは最下位を取った。将来はニートになって、切羽詰まったら自殺すればいいなんて甘いことを考えて生きている。
深夜、家族が寝静まった頃、俺はスマホでエロサイトを巡回した。
しかしエロサイトのサーバーに負荷が掛かってて、なかなか繋がらない。繋がらないのは俺が独りじゃないから。独りぼっちの部屋はこの世界中で繋がっている。
その事実に気付いた瞬間、俺は少しだけ救われたような気がした。
俺みたいに、うだつの上がらないどうしようもない独りぼっちの奴がこの世には沢山いる。だから俺は独りなんかじゃない。仲間がいっぱい。
『ひま。先輩は今何やってんの』
俺がエロサイトを巡回していた時、ネットで知り合った女子高生からLINEが来た。
この女子高生は俺の一つ年下で、美術部の幽霊部員だったのだが、つい先日高校を辞めたらしい。高校に馴染むことが出来ず、常に独りぼっちで過ごしていたそうだ。
高校時代という多感な時期を独りで過ごすのは、拷問に等しいレベルの苦痛である。だから俺は高校を中退した彼女に少し同情した。俺もまた孤独だったからだ。
それに高校を辞めたって、人生の道は一つじゃない。高卒認定を取って進学するのもありだし、道なんて無限にある。
そんな話を俺は彼女にした。そしたら彼女に『ありがとう』と感謝された。
『俺は今、エロサイトを見てる』
彼女からのLINEに俺はそう返した。すると、こう返ってきた。
『きも』
それを見て、俺は少し笑った。独りぼっちのこの部屋で。
〜終わり〜
【12月の横浜の風景】
26歳フリーターの俺は大好きなバンドであるsyrup16gのライブを見る為に群馬から横浜まで遠征していた。横浜に着いたが、開場の時間までは残り2時間くらいだ。
俺は時間を潰す為に、12月の寒い横浜をウロウロしていた。暖かいニトリに行って12万円のふかふかの椅子に座ってスマホをいじったりしていた。とても気持ちいい椅子だった。椅子というか、ソファだった。
12月の横浜を歩いていると、とてもイルミネーションが綺麗だったから、田舎者の俺は何枚か写真を撮った。
とりわけ俺の目に多く映ったのは、手を繋いで楽しそうに笑って歩くカップルたちの姿だった。とても羨ましかった。
(俺も彼女が欲しいなあ)と思ったが、こんなブサイクでキモい俺に彼女なんて出来るわけないだろ。俺はおそらく生涯孤独だ。幻想を見るのもいい加減にしろ。俺に彼女なんか出来ねえ。
ライブの会場に入ると、男女問わず、1人で来ている客がとても多いような気がした。
俺は2階の指定席に座っていたのだが、周りの人はみんな1人で来ていた。俺も1人で来ていた。
──ああ、俺みたいな孤独な奴が、沢山いるんだ。
syrup16gのライブの客層は、なんかみんな優しそうな感じっていうか、普段は家に引きこもってそうな奴が多い気がする。ヤンキーみたいな客はガチで1人もいない。
俺もアパートでほとんど引きこもりみたいな生活してるけど、五十嵐隆は引きこもりにとってのヒーローだ。
もちろんライブは最高だった。セトリも俺の大好きな曲ばかりだった。
俺は「あー自殺しなくてよかった」と思いながら、1人でライブ会場を後にした。
俺はきっと1人だが、“独り”ではないと思った。
どんなに忘れたくない記憶だって、時間の経過と共に必ず色褪せる。だから俺はきっと来年も生きていて、来年のsyrup16gのライブも見ているのだろう。
ちなみに俺は2階の指定席の1番後ろで座って見てたけど、めちゃくちゃ見やすかったし、なんか後ろから涼しい風が吹いてきてて気持ちよかった。
syrup16gのライブは絶対1階スタンディングよりも2階の椅子の方がいい。
ところで俺は思うのだが、田舎での孤独よりも都会での孤独の方が痛みは大きいような気がする。
何故なら都会には常にカップルがいるからだ。それが俺の孤独感を刺激してくる。
俺は世の中の全てのカップルに対して嫉妬の感情しかありません。
俺も横浜を彼女と手繋いで歩いてみたいわ。横浜ってなんかおしゃれな感じするし、めっちゃいい街だよな。
ていうか全然関係ないけど俺は大学生になりたかったよ。
大学生って世の中舐めてるし酒飲みまくるしめっちゃ楽しそうじゃん。
〜終わり〜
続く
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